ブラインドフォールドの効用



 
 ジャズ愛好家の仲間内でのお遊びにブラインドフォールド テストというものが有ります。まったく何の情報も知らさないでかけた曲について、その演奏者を当てるといったものです。
 知り合いのOさんがこのお遊びに結構はまっていまして、この間も自分で制作したCDと問題を私に持って来ました。ブラインドの問題を作るというのはなかなか難しいものです。誰も知らないような演奏者を当てろというのは問題として成立しませんし、かといって有名なアルバムからセレクトするとただの知識問題になってしまいます。
 ブラインドはどれだけの曲をアルバムを聴いて覚えているかというのを競うのではなく、演奏を聴いただけでその奏者を当てるという部分に妙味があるわけです。したがって理想的な問題は良く知られている奏者ではあるがあまり世の中に知られていない演奏ということになります。たとえば良く知られているミュージシャンのブートレッグであったり希少盤からの出題というのが望ましいわけです。
 この良く知られたという部分も年季の入ったジャズ愛好家になるとだんだんマニアックな演奏者を出題したくなるものです。ピアノですとパウエルやピーターソンといった有名人では飽き足らず、ウォルター デービスとかローランド ハナなどといった人達を選択したくなるわけです。
 出題する演奏の年代も通常では1945年頃から1965年頃といったところが一般的だと思います。それ以降の年代に活躍するミュージシャンだと普通のジャズを聴く人にはまず親しみが無いからです。これについてもジェーソン モランであるとかD.D. ジャクソンといった人を出題したくなるのですが、普通の愛好家達には守備範囲外になってしまうことが多いのです。
 つまり将棋や囲碁の対戦相手を探すようなもので出題者と回答者のレベルが揃っていないと面白いブラインドテストは成立しないわけです。こういった傾向がどんどんエスカレートして、すれっからしのジャズおたくにしか分からない問題ばかりになってしまうことがままあります。レイ ジョンソン、ドン スリート、カルロス ガーネット、トニ パシーニ… こうなると普通のジャズ愛好家の手には合わなくなってしまいます。
簡単な問題では歯ごたえが無くて面白くなく、あまり難しいと誰にもわからない問題になってしまうので、その辺のさじ加減がブラインド テストでは一番の要点になるわけです。

 回答者としてブラインドテストを経験すると、自分がいったいどのようにジャズを聴いているかがよくわかります。
  テーマばかり聴いていてアドリブは聴いていない
  メロディーラインは聴いているがバッキングは聴いていない
  意外にドラムスを良く聴いている
  60年前後のファンキーはおまかせ
  ブルーノートは良く聴いているがプレステッジは聴いていない
 といった具合に自分の日ごろのジャズの聴き方や得意なところ、不得手な部分などが明確になるといった効用がブラインドテストにはあります。
 私の場合ミュージシャンの個性をその音色によって判別している部分が大きいということに気付かされました。特にそれはホーン陣やベースについて顕著でした。音色がハッキリと確認できない録音だといったい誰なのか良くわからないのです。たとえばフレージングにハワード マギー特有の個性を認めても、音色が違うとハタと困ってしまうのです。ベースに至っては音色や輪郭がハッキリしないオーディオで聴くともうまったくのお手上げです。

 スイングや中間派のセッションは聞いていないので当たり前なのですが、まったくわかりません。エリントンも聴かなあかんなーといいながら10数年。ブラインドの一番の効用はまだまだ聴いていない、いい演奏に気付くことだと思います。
  
  
 

2005年11月29日 象をなでながら考えるJAZZ トラックバック:0 コメント:1

ギタリストですがバリー ハリスの愛弟子です (BlogPet)

昨日、sonnyが
このことから人にロリンズの新譜の調子を見分ける方法として、コンサートの途中でセントトーマスが新譜されれば調子が悪く、アンコールで新譜されれば調子がいいと思ってくださいと言っています。
とか考えてたよ。

*このエントリは、BlogPet(ブログペット)の「silver」が書きました。

2005年11月24日 blog pet トラックバック:0 コメント:0

ギタリストですがバリー ハリスの愛弟子です



"Backyard" Roni Ben-Hur (TCB)

 若手ミュージシャンのプロフィールに「バリーハリスに師事する」といった記述を良く見かけます。ほほうっと思いその方の音楽を拝聴すると、ビバップのかけらも無く、いったいどこにバリー翁の影響があるのかしらんと思うことがほとんどです。バリーは後輩の指導に熱心でジャズ演奏についてのテキストも何冊か書いているようです。
 それにしても彼の弟子を名乗る人がが多すぎやしないかと思っていたら、その謎をNY在住のミュージシャンが解いてくれました。バリーはワンポイントレッスンを数ドルの料金で希望する人達に行っていたそうです。1回5分から10分程度で、そのレッスンが行われるときにはミュージシャンを志望する者の長蛇の列が出来ていたそうです。バリーに師事したと主張する方の全てがそのようなワンポイントレッスンの受講者では無いでしょうが、その話になるほどなあと納得しました。
 師匠弟子の関係というのは通い住み込みの別はあるにしても、師匠の鞄持ちに身支度の手伝い、楽器のセッティングといった状景を思い浮かべるんですが…古すぎますかね。いずれにしても師匠の面影をうかがわせる位の演奏は欲しいような気がします。
 ここに紹介するロニ ベン-ハーのギターをはじめて聴いた時は本当に驚きました。ギタリストなのにそのフレージングやニュアンス、間の取り方等がとてもバリー ハリスのピアノにそっくりだったからです。その上その音色からはバリーの持っている暖かさまで聴こえてくるのです。いやぁ思わず唸ってしまいました。
 ホーンライク(金管奏者のよう)なと形容されるギタリストは山ほどいます。それを一番感じさせるのはグラントグリーンでしょうが、ピアノのようにと形容されるギタリストは寡聞にして知りません。楽器の機構からしてもピアノとギターではまったく異なるのですから、ピアノのようにギターを弾くというのは技術的にも困難だと思われます。それでもベン-ハーのギターはバリーのピアノの面影をはっきりとうかがわせるのです。
 このアルバムではビバップの生き証人たるベースのライル アトキンソンにドラムスのリロイ ウィリアムス、そして師匠のバリー ハリスが共演しています。ビバップの演奏をしようとするのならもうこれ以上は望めない素晴しいメンバーです。彼のデビューアルバムに師匠が送った最上のサイドメンであったのでしょう。
 演奏される曲はモンク、バリー、ロリンズ、といったミュージシャンのものに自作曲とスタンダードです。デビューアルバムにありがちな気合の入った演奏を望む人は肩すかしを喰らうでしょうが、ゆったりとしたくつろげる暖かい演奏がアルバムにたっぷりと詰まっています。
 ゆっくりとした時間をジャズを聴きながらすごしたい方にまさにうってつけのアルバムです。もちろんバリー ハリスのピアノアルバムがお好きな方には気に入ってもらえることを請合います。
 
 私はこのアルバムのジャケットがとても好きです。おじいちゃんと親戚の大叔父さんに囲まれて、就職を祝ってもらっている大学生といった感じがするんですけどね。なんだかこのジャケットだけでほのぼのしてしまいます。


この記事で紹介しているアルバムです。
BACKYARD




2005年11月17日 埋もれたCD紹介 トラックバック:0 コメント:3

ジャズ喫茶でのいいリクエストって??? (BlogPet)

ほんとうは、sonnyは
演奏の後、少しについてのMCをはさむことが多いロリンズですが、この少しの終了後はその場で「ありがとうございます」と言った後次の少しに思いをはせるような表情でじっとしていました。
とか書いてた?

*このエントリは、BlogPet(ブログペット)の「silver」が書きました。

2005年11月17日 blog pet トラックバック:0 コメント:1

ボビー ブルームもいい味がでてきましたね




"Deep blue bruise" Deep blue organ trio (delmark)

 まだまだロリンズのコンサートの余韻が残っているのですが、おまけに今回のコンサートで嬉しかったのは生のボビー ブルームが聴けたことでした。ボビーのことを知ったのはロリンズの81年のアルバム"No problem"によってでした。
 新人ではありましたが彼のギターを聴いて感じたのは、良く考えてソロをとる人だなということでした。テクニックに任せてバリバリと早弾きをこなすギタリストはいくらもいるのですが、彼は曲のグルーブを出すことに力をいれているようでした。またバッキングでもボビーは他のメンバーの出す音を良く聴き演奏をしていることが伺えました。
 そのときボビーはまだ弱冠20歳。将来性のあるいいギタリストが出て来たなという印象を強く持ちました。その後ロリンズのグループから離れケニー バレル、マイルズ等一流ミュージシャンのグループでサイドメンをつとめていたようです。
 リーダー作も近年はクリスクロス等から数枚発表していたのですが、今年の初めに入手したディープ ブルー オルガン トリオ名義の作品は聴きあきしないいい作品で折にふれて楽しんでいます。
  ディープ ブルー オルガン トリオはオルガンのクリス フォアマン、ギターのボビー ブルーム、ドラムスのグレッグ ロッキンガムによって構成されています。ボビー ブルーム以外はよほどのファンで無い限り知っている方はいないと思います。
 クリス フォアマンは1957年シカゴの生まれ、生来の盲目でブルーズとジャズにまたがり演奏を行っています。サイドメンとしての仕事はアル コリンズ、ハンク クロフォード、バーナード パーディといったミュージシャンとプレイしています。またピアニストとしての活動もあるようです。
 ドラムスのグレッグ ロッキンガムは1959年イリノイ出身、フレディ コールやチャールス アーランドなどと共演しています。ボビー ブルームとはそのアーランドのサイドメンとして共演、知り合ったようです。
 典型的なオルガン トリオの編成でしかもブルーズもよくするメンバーといえばいわゆるコテコテの演奏を思い浮かべられるかもしれません。ところが実際はそうでもありません。深いブルーズの香りも漂わせながらタメもききつつ、都会的な演奏を繰り広げているのです。ちょうどスタンリー タレンタインのアルバムの感じを思っていただければいいと思います。本当にこのトリオにタレンタインのテナーがのっかる様を聴いてみたいものです。今となっては無理な相談ですが。
 オルガンが苦手な方でもブルージーなピアノがお好きな方にはまさにお薦めのアルバムです。

 ロリンズのコンサートで聴くボビーもなかなかのものでした。ロリンズの演奏を引き立てる様にと気をつかい、ソロでは音数を抑え間を活かしたブルージーな演奏は見事なものでした。派手な演奏ではないですがまさに玄人好み、反面ジャズを聴き始めたばかりの人には少々わかりにくかったかもしれません。最後のコンサートに昔のボスが呼んでくれたことに、内心期するところがあったのだと思います。ロリンズの調子が上がりのってきたところで、ボビーの演奏も同じ様に調子が上がることにも好感が持てました。
 あまり穿った見方は得意ではありませんが、ロリンズとの共演で歌心とグルーブを学び、バレルからはブルージーさを、マイルズから間を学び取ったのではないかなと思わせます。
 また一人味のあるいいミュージシャンが最盛期を迎えたようで本当に嬉しく思います。まだ聴いていないリーダー作品も買わなくてはいけないなと淋しい懐具合と相談しているところです。

2005年11月12日 新譜紹介 トラックバック:0 コメント:0

平安の響きへと (BlogPet) (BlogPet) (BlogPet)

きょうは、BlogPet(ブログペット)の「silver」
が書きました
とか思ってるの。


*このエントリは、BlogPet(ブログペット)の「silver」が書きました。

2005年11月10日 blog pet トラックバック:0 コメント:0

嬉しいことにロリンズは絶好調でした



  11月2日のロリンズコンサートを大阪厚生年金会館で聴いて参りました。ロリンズのコンサートへは可能な限り行くようにしているので今回で十数回目になると思います。彼のコンサートは出来のいい時と悪い時の差が大きい事を経験として知っていますので、期待と不安が入り混じった複雑な心境でこのコンサートに臨みました。毎回同じ様な気持ちになるのですが、今回はこれが最後のコンサートだと思えばその気持ちも一層強くなる気がします。
 ジャズのアドリブというのは全て即興でその場で作られると思っていらっしゃる方も多いと思います。しかし、実際にはそれまでの演奏の中から会得したフレーズを演奏するといったことも良くあります。極端な話しライブの場でレコードとほぼ変わらないと思うようなソロをとる演奏家も存在します。
 ロリンズの場合、そのアドリブは今まさにそこで生まれ出たフレーズを紡いでいくと言う本来の意味での即興演奏を行う数少ない演奏家です。そういう意味ではチャーリー パーカーと肩を並べる演奏家というのはジャズ界の中でもロリンズしかいないのではないかと思います。
 こういった演奏方法をとるがゆえに、ロリンズのライブ演奏は好調不調の差が激しくなるのはやむ終えないことだといえます。ロリンズという人はお客さんに楽しんでもらおうという気持ちの大変強い人です。演奏の調子が悪いときには、セントトーマスやモリタートといったヒット曲のオンパレードを繰り広げ、少しでもお客さんに楽しんで貰おうと演奏態度をシフトします。
 このことから人にロリンズの演奏の調子を見分ける方法として、コンサートの途中でセントトーマスが演奏されれば調子が悪く、アンコールで演奏されれば調子がいいと思ってくださいと言っています。
 
 今回のコンサートメンバーはベースに盟友のボブ クランショウ、ドラムスにスティーブ ジョーダン、トロンボーンにクリフトン アンダーソン、ギターには久しぶりにボビー ブルーム、パーカッションにキマチ ディニズルという編成でした。
 演奏が開始されて2曲ほどはまずまずの出来、75点といった印象を受けました。断っておきますがあくまでもロリンズの演奏としてはということで平均的なジャズの演奏であれば後20点はあげてもいいような出来です。愛するロリンズの真価を知るだけにその点数は辛めになってしまいます。
 だんだんと演奏を進めるうちに調子が上がったようで、ナイチンゲール サング イン バークリースクエアを演奏する頃にはアドリブに神懸り的なものを感じるようになりました。演奏の後、曲についてのMCをはさむことが多いロリンズですが、この曲の終了後はその場で「ありがとうございます」と言った後次の曲に思いをはせるような表情でじっとしていました。ジャズミュージシャンが演奏中に時折見せるといわれる「祈り」の瞬間が訪れたのかもしれません。私には「祈り」というよりは、つかみかけたミューズの着衣を離さないでおこうとするかのように見えました。
 時をおかずにその後演奏された曲はまったく文句のつけようがないほど素晴しいものでした。あふれ出るという言葉がまさにぴったりとしたいつ果てるともなく圧倒的なソロ。自由自在、天才のわざとしかいいようなない奔放な演奏。私の稚拙な文章力ではどうにも現せない凄まじく、そして暖かい演奏が惜しげもなく繰り出されます。
 ここにいたり、ずっとこの演奏を聴いていたい、終わってしまわないでくれと願っている自分に気付きました。私は凄みと幸せに体が打ち震えるのを感じていました。私のロリンズ体験の中で三本の指に入る素晴しい演奏でした。
 ひとつ言っておきたいのはこれらの感動は決して75歳の演奏家としての評価ではありません。年をとり枯れたという思いはロリンズの演奏からは微塵も感じません。サキソホン コロッサスが彼の最高の演奏なんて言葉がまったくの誤りであるというのはこのコンサートをお聴きになった方は理解していただけたと思います。75年の歳月を経て尚高いきわみへと登り続けるロリンズの姿がそこにはあります。
 いつもは二部構成をとるコンサートですが、休憩を挟まず一気に二時間ばかりの演奏を終えました。今回の大阪のロリンズコンサートに行かれた皆様はとても幸せな方たちです。名ばかりではない真の天才の演奏が繰り広げられたその場に参加したのですから。

 もちろんセント トーマスは最後の演奏曲でした。

2005年11月04日 実演鑑賞 トラックバック:2 コメント:10