見かけはヒップなロバート グラスパー




"In My Element" (BlueNote)
   イン マイ エレメント
  Robert Glasper    
       ロバート グラスパー



ジャケットの写真をご覧下さい。キャップをかぶりちょっとふてぶてしくポーズをとっているのはロバート グラスパーです。

この格好でヒップホップ系のライブでキーボードを弾いていると知っていると
 「現代の若者たちのヒップホップシーンからジャズに新しい息吹を感じさせるニュースターが現れた……」
なんて評論をまんま鵜呑みにしちゃうでしょうがちょっと待ってください。

グラスパーは意外とまっとうなジャズピアニストです。


ヒップホップをもよくするアフロアメリカンのジャズピアニストと言うことから、黒々とした演奏を想像されるかも知れません。ですが、実際の彼の演奏からは非常にスマートで都会的な印象を受けます。

どちらかと言うとクールな感じすらします。


はじめてグラスパーの演奏を耳にしたのはフレッシュサウンドにニュータレントシリーズでの物でした。

そのときには彼の演奏はなかなか新鮮味のあるピアノだなと思いましたが、アドリブラインからは強いハービー ハンコックの影響をうかがうことが出来ました。



冒頭に紹介した「イン マイ エレメント」では彼のしっかりとした個性が確立されたと思わせるアルバムに仕上がっています。

右手と左手をフルに使いながらスバニッシュダンスのステップを思わせるようなユニークなフレーズ。


アドリブからは滾々と湧き出る泉のようなイメージがあります。泉のように自由自在にアドリブをおこなうというのではなく、そのアドリブから泉を連想させると言う意味です。

流れる川を連想させる部分もあるのですが、演奏がその流れに沿って進展して行き表情を変えていくと言うのでもありません。

ずっと同じ場所に留まりながらその情景を描写していくという感じがします。

一つのテーマに様々な角度からの視点を通してそれらを描き出していくと言ってもいいかも知れません。

そういう意味では非常にクラシカルな演奏法だともいえると思います。


その演奏に内省的な部分も多くあり、資質的にはブラッド メルドーに通じるところがあるように見えます。


全編をとおして、若々しい力があふれでているところもこのましく、なかなかの佳作であると言えます。


グラスパーがこのまま情景描写を得意とするミュージシャンとして演奏を続けるのか、ストーリーテリングをも身に付けて更なる局面をへていくのか。

また一人なかなか楽しみなミュージシャンが出現して嬉しく思います。


見かけや趣味だけで演奏を推し量るのではなく耳をすまして音楽を聴いてみるのは大切ですね。



この記事で紹介したアルバムです。少しですが試聴も出来ます。
In My Element



2007年07月27日 新譜紹介 トラックバック:1 コメント:12

ターン(BlogPet)

きのうsilverが、sonnyのレギュラーユニットターンするはずだったの。

*このエントリは、ブログペットの「silver」が書きました。

2007年07月25日 埋もれたCD紹介 トラックバック:0 コメント:0

コルトレーンの命日に気づいて「BLUE CITY」のマスターを思った




"The John Coltrane Quartet plays" (Impulse)
   ザ ジョン コルトレーン カルテット プレイズ
  John Coltrane    
       ジョン コルトレーン


お客さんに「今日はコルトレーンの命日ですね」と言われて気が付きました。確かに7月17日はコルトレーンの命日でした。

日本のジャズファンの中にはコルトレーンに対して多くのシンパシー、いやそれ以上の神格化された存在として意識を持つ方が少なからずいらっしゃいます。

彼の音楽より発せられる強い精神性や愚直なまでの生真面目さ。人間臭さ、不器用さ。そして早過ぎる死。

特定の人たちにとってはコルトレーンと言う人はとりわけ別格な扱いを受けているわけです。

コルトレーンの命日には一日中コルトレーンのアルバムをかけるといったジャズ喫茶もありました。ひょっとしたら今でもそういうお店があるかもしれません。


そのせいか、彼の残した音楽についてあまりにも過剰に思い込みを持って語られる場合があるように思います。

その文脈で言うならば「ア ラブ シュープリーム」や「クル セ ママ」「ライブ イン ジャパン」と言うアルバムはまさに彼の代表作であると言うことになるのでしょう。

その反面彼が残したアルバムのうちもっともセールスの良いのが「バラッズ」であるというところが、大多数のジャズファンのコルトレーンの音楽に対する本音を現しているようで面白いことだと感じます。


個人的には彼のアルバムをターンテーブルの上に載せる機会はそれほど多くありません。ただ、たまたま彼の命日だと知ることになったので冒頭に記した「ザ ジョン コルトレーン カルテット プレイズ」を聴くことにしました。

ジャズ史上のなかでも屈指の名作と謳われる「ア ラブ シュープリーム」と「クル セ ママ」の間に挟まれてちょっと影の薄いアルバムですがこのアルバムを気に入っています。

マッコイ タイナー、ジミー ギャリソン、エルヴィン ジョーンズという鉄壁のレギュラーユニットの爛熟の極に演奏された力強い演奏です。

「クル セ ママ」以降この黄金のクインテットはコルトレーンの更なる音楽性の変化への希求により解体してしまいます。その直前にあって、このクインテットのまさに絶頂がこのアルバムで楽しめると思います。

それぞれのメンバーが自信に満ち溢れ喜びを感じながら演奏するさまは素晴しい物だと感じます。この前後に発表されたアルバムに比べてメッセージ性やアルバムコンセプトが薄い分、演奏曲をすんなり楽しめる良さも気に入っている部分です。


もう17,8年ばかり前のことになりますか。上新庄にあった「ブルー シティ」と言うジャズ喫茶に伺うと
 「昨日、コルトレーンの命日やのに誰一人店にけーへんねんで。こんな馬鹿なことがあるか、Sonny君」
  となげいていたマスターを思い出しました。

 山下さん、お元気ですか。
 ことしの命日にもコルトレーンをお聴きでしたでしょうか。




この記事で紹介したアルバムです。少しですが試聴もできます。 
The John Coltrane Quartet Plays





2007年07月18日 レコード トラックバック:0 コメント:6

パラゴンマスターの鈴木さんのこと




西宮市にコーナーポケットというジャズ喫茶があります。

ちゃんとしたジャズ喫茶というのは本当に少なくなりました。有るうちにどうぞ足を運んでください。


そこの鈴木マスターが急にお亡くなりになったということを伝え聞きました。にわかにはまだ信じられない気持ちでしたので鈴木マスターと古くからの友人である先輩のSさんに確認の電話をしました。

Sさんもまた人づてに鈴木さんのなくなったことを聞いたところだとのことでした。

コーナーポケットさんのホームページでの掲示板にもマスターの訃報が語られていました。


どうやら間違いのない事実のようでした。



実を言うと私はコーナーポケットというお店に伺ったことがありません。


もう今は無いのですがその昔大阪のミナミにWさんの経営する全国に名の知られた、ジャズの中古レコード店のMがありました。

ある日、いつものようにそのMでレコードをあさっているとWさんが、そこに同じくレコードを探しに来た鈴木さんを私にコーナーポケットというジャズ喫茶のマスターだと紹介してくれました。

その日に収穫したレコードを持って先輩のSさんのお店に行くと、なんとまた鈴木さんがいらっしゃいました。

鈴木さんは先輩のSさんとは古くからの知り合いなのでした。

そのときに私は鈴木さんとジャズの話を少しばかりし、いつかまたお店のコーナーポケットに立ち寄りたいとお伝えしました。


それから何度かコーナーポケットに立ち寄れそうな機会が有ったのですが、あいにくお店が閉まっていてそれきりになっていました。


コーナーポケットには名器とも謳われまたただのガラクタともけなされるパラゴンという大きなスピーカーが設置されていました。それだけ毀誉褒貶の激しい理由にはこのパラゴンというスピーカーの使いこなしが難しいためでした。


じつはかなり年代は違うのですが私もまたパラゴンというスピーカーを使用しています。


かなり大型のスピーカーでもあり日本で所有している方はそれほど多くはありません。

パラゴンのその気ムヅカシイ性格のせいかこのスピーカーを所有するオーナー達は他のパラゴンの音が気になるようで、私のところへかれこれ二十人ばかりの方がいらっしゃいました。

それらの方はまずほとんどコーナーポケットへも行った事があり、私のものと比べて様々な感想を述べて帰られます。


鈴木さんはパラゴンをマルチアンプ駆動といって複数のパワーアンプで鳴らしておられました。これはかなりマニアックな使用方法でオーディオを趣味とされる方はこの方法を夢見ている方が多いようです。

この方法には音のバランスを調整するのにかなりの神経を使うことになります。気難しいパラゴンをキリキリと力ずくで調教するといった具合かと思います。


他方私はと言えばオリジナルのネットワークのまま、スピーカーの年代にあわせてセパレートアンプで使用しています。

パラゴンを調教するというよりは、いかに機嫌よく鳴ってもらえるか馬なりに走らせているといった感じです。


このブログやメルマガでも明言しているとおり私はオーディオマニアが好きでは有りません。オーディオは道具であり、ためにためするのは私の望むところではないからです。

そのためもあって何となくコーナーポケットへと足を運ぶのが億劫になっていた部分があったのかもしれません。


共通の知人でもある先輩のSさんを介してまた時間がとれる日があるだろうと、勝手に思い込んでいたようにも思います。

鈴木さんとは接点はいくらもあったのに。


パラゴンを通してジャズを聴いてこられた鈴木さんの経験はいかばかりのものがあったのでしょうか。

「しまった、またおそかったか」

これが今の私の正直な思いです。鈴木さんとしか話せないことはいくらも有ったはずです。
ちょっと無理をすればいつでも行けたろうに。


鈴木さんのいないコーナーポケットはどうなるのでしょうか。

これから私が鈴木さんのいないコーナーポケットに足を運ぶことがあるだろうか。


まずは鈴木さんの安らかならんことを心より祈念いたします。












2007年07月13日 埋もれたCD紹介 トラックバック:0 コメント:0

92年ベルギーでのマクリーン




"The Jackie Mac Attack Live"(birdology)
     ザ ジャッキー マック アタック ライヴ
   Jackie McLean
     ジャッキー マクリーン


何もマクリーンに限ったことではないのですが、70年代以降のそして特に日本制作ではない彼のアルバムの注目度は低いように思います。

彼が日本では非常に人気のあるレーベルの旧ブルーノートの看板スターであったこともそのことに拍車がかかっているような気がします。

マクリーンという人は彼が亡くなった際の記事にも少し触れましたがジャズの本質を掴み取っていた人のような気がします。
しかも天才ではなく一人の人間らしい人間として。


いくらかジャズを聴いてきた方は彼がビバップからフリーやフュージョンまで様々の形態のジャズに挑んできたことはご存知だと思います。ただ、それらのムーヴメントの中でオリジネーターとしての活躍というのはなかったと思います。

そして様々なジャズシーンの中で等身大のマクリーンをアルバムに刻み込んでくれたと感じています。


彼のプレイをわかりやすいバッパーとしての評価に終始しプレスティッヂやブルーノート初期のプレイぶりのみを愛でておられる方もたくさんおられるようです。

しかしたいていの方が注目をされていない80年以降の作品の中にこそ、彼がたゆまずに精進してきた私がいとおしく思う作品が有ります。

彼の息子のルネを擁したレギュラーユニットのアルバムには教育者としての成果を含め素晴しい作品があります。


それはそれとして冒頭に上げた「ザ ジャッキー マック アタック ライヴ」は彼のアルトのみのワンホーン作品です。サイドメンはいずれも長らくの間教鞭を共にとった仲間達が勤めぴったりと息のあった作品に仕上がっています。

中でもピアノのホテップ アイドリス ガレッタの力強い演奏に耳を魅かれます。なんというかホレス シルバーがマッコイ タイナーのまねをして少しばかりダラー ブランドの匂いがするといった感じです。


演奏されている曲は当時のレギュラーユニットの持ち歌ともいえる曲が4曲に、懐かしやバップ時代の「マイナー マーチ」にモンクの珠玉の名曲「ラウンド ミッドナイト」といった構成です。

「マイナー マーチ」や「ラウンド ミッドナイト」といった良く知られたスタンダード曲でもありきたりの昔なつかしの演奏に終わらず、マクリーンのそれまでのジャズの集大成としての中身の濃い演奏が繰り広げられています。


気のあった知り尽くしたメンバー達との共演で他のホーン奏者のことも気にせずに伸びやかな気持ちの良い演奏が楽しめます。

青年マクリーンの青臭いスタンダードもいいですが、初老になったマクリーンのワンホーンの快作にも耳を傾けていただけたら嬉しく思います。

2007年07月10日 埋もれたCD紹介 トラックバック:1 コメント:4