こんどはマイルズおじさんのお話


"The Man With The Horn" (col)
Miles Davis'


ロリンズとアンダーソンの記事を書いていて
そういえばマイルズと甥っ子の話も思いついたので少し。

マイルズはスタジオ録音としては74年の”Get Up With It”から
長い間の休眠状態に入ります。
マイルズ自身はジャズミュージシャン(いやいやジャズと呼ぶなと言ったのは彼だけど)
はもういいやと思っていたという話もあるようです。


そのマイルズを引退状態から引っ張り出して
ミュージシャンとして復活させたのが甥っ子の
ヴィンセント ウイルバーンでした。

そして六年ぶりのスタジオ録音となったのが
冒頭のアルバムであります。

ヴィンセントはマイルズの姉であるドロシーの息子なのですが
彼の六歳の誕生日のプレゼントを何にしようかと思いあぐねていた姉に
ドラムセットを送ったらいいじゃないかとアドバイスしたそうです。

マイルズがヴィンセントにプレゼントしたとの情報も見かけますが
どうやらそうではないらしいです。


さて時は流れてミュージシャンとしてある程度の実力を付けていたヴィンスが
半引退状態のマイルズを刺激し自分のグループにマイルズをフィーチャリングして
録音した曲が上記アルバムのタイトル曲である「ザ マン ウイズ ザ ホーン」です。


というような状況でマイルズは再び音楽界に復帰したわけなので
ある意味では甥っ子のヴィンセントはマイルズの恩人と言えなくも無いですな。

その経緯もあってしばらくの間ヴィンセントはマイルズのグループの一員として
活動するわけですが
復帰興行のツアーの帯同の間に
ミュージシャンとしての実力が足りぬと見るや
甥っ子をクビにしてアル フォスターにドラムを戻してしまいます。

姉のドロシーが故郷でのコンサートが終わるまででいいから
ヴィンスをグループに置いて欲しいと嘆願するのも介さずに……



実力がそれほどでもなかったアンダーソンを
一人前になるまで我慢強く使いつづけたロリンズ

自身の音楽を実現するに不足と見るや
ためらわずに身内のものさえ切ってしまうマイルズ


どちらがいいと言うのではなく
この出来事は二人の音楽観や人生観を見るようで
誠に興味深いと感じられます。



そんなマイルズですが
ヴィンセントをそれ以降省みなかったわけではなく
このアルバム


"You're Under Arrest" (col)
Miles Davis


では再び彼を起用し
名作を世に送り出しています。



さてそれからそれほどの時を待たずして
マイルズは鬼籍に入ることとなります。


そして現在
ヴィンセントはマイルズの生前彼が有した
すべての音楽権利を管理する位置にあります。


ここでもまたマイルズのバトンは
甥っ子へと受け継がれたというべきではありましょうな。








2016年02月04日 埋もれたCD紹介 トラックバック:0 コメント:0