"Miles Ahead"マイルズはバックミラーを捨てたのか〜"Miles & Quincy Live at Montreux"

前々回の記事で映画の"Miles Ahead"を取り上げましたが
このタイトルはもちろんマイルズの同名のアルバムからとられたものです。


"Miles Ahead" (CBS)
Miles Davis Gil Evans


日本ではオリジナル主義が尊重されるので
上記のアルバムジャケットで知る方が多いと思います。

ところがアメリカ本国では一般的に知られるジャケットは
下記のものであるようです。





日本でのアルバムも過去に両方のジャケットで発売されているので
中古盤で購入される方は重複して買わないように注意が必要です。


さてそれではなぜ同一のアルバムが発売本国であるアメリカで
二種類のジャケットで存在するのかでしょう。

マイルズのファンの間ではもう有名な話ですが
"Miles Ahead"が最初に発売された時には冒頭の
船に乗った女性が映る写真を採用したものでした。

ところがこのジャケットに対してマイルズが激怒したというのです。

曰く
「俺の作品に白人女性の写真を使うとは何事だ」
ということだったそうです。

そこでCBSの担当者は慌てて二つ目に掲載した
マイルズがトランペットを吹くジャケットに差し替えたのでした。
  どう見てもやっつけ仕事のようなジャケット……

確かにマイルズのアルバムで海賊盤は置くとして
白人女性が映ったジャケットというのは思い当たらないですねぇ。


マイルズが自分のグループに白人であるビル エヴァンズを採用した時に
多くの人から
「どうして白人のピアニストをメンバーにするんだ」と責められたときに
「いい演奏をするんなら緑色をしてようが縞々だろうが知ったことか」
と答えたのはマイルズの音楽観を良く表していると思います。

そんなマイルズなのにジャケットに関してはリベラルとはいかないようで(笑)。


このジャケットよく見ていただくと「+19」とあります。

LPの時代には不思議でもないことですが
これは19ピースのビッグバンドとの共演を表しています。

でも最近のCDしか知らない世代の方たちは
これを19の曲が追加収録されていると思うんじゃないでしょうか。

実際近年に発売されているCDにはオリジナルのアルバムに
追加収録曲が5曲加えられています。

「+19に+5すると全部で15になるわけですな」
うーん ややこしいいいいいいいいいい


さてこのアルバムは以降も続くマイルズとギルとのコラボレーション第一作。

ギル エヴァンズの精緻に作りこまれたスコアが
ビッグバンドによって見事に音によって実現された絨毯の上に
緊張感のあるマイルズのトランペットがこの上のない調和をもって演奏され
まるで一級品の美術作品を見るようです。

まさにマイルズとギル以外の出会いでは生まれえなかった一期一会の音楽。

This is jazz




さて、
ひたすら時代と共にその音楽性の歩みを止めることなく走り続けたマイルズ。

このギル エヴァンズとの作品群もマイルズにとっては振り返られることのないもの
   と 誰もが思っていたはずなのに
なんとマイルズの音楽人生の最終盤にいたって再現を試みられることとなったのです。

それが

"Miles & Quincy Live at Montreux"


音楽評論家の黒田 恭一氏に
「バックミラーを捨てて走り続ける車のようだ……淋しくはないのですか」
と言われたマイルズ。

この文章を眼にしたときに
私は
  黒田 恭一はジャズの事はようわかっとらんなぁl
と感じたもんでしたが

うーん 淋しかったのか マイルズ


私の耳にはこの作品は 画竜点睛を欠く ならず
蛇に足を描いたように思えるのですけれど

マイルズの空白の五年間 よりも
ずっとずっとこの "Miles & Quincy Live at Montreux"のほうが
よっぽど大きな謎ですなぁ。

はてこのマイルズの作品が腑に落ちる日はくるのか 









2017年07月19日 埋もれたCD紹介 トラックバック:0 コメント:0

こんなところにローランド カーク Soul Bossa Nova


"Big Band Bossa Nova" (Mercury)
Quincy Jones

クインシー ジョーンズの「ソウル ボサノヴァ」と言われて
 あぁ あの曲ね
とピーンとくる人はそれほど多くは無いかもしれませんが
曲を耳にすれば誰もが知る曲ですね。

我々おっちゃん連中の間では
 モード学園のCMのやつ
と言えばハハーンと合点がいくはずです。

もう少しお若い方だと

「オースティン パワーズ」のテーマとして知られていると思います。

と言ってもこの映画ももうすでに前世紀のものですなぁ(笑)。

近年でもCMなんかで頻繁に使用されている曲なので
今時のお若い方でも耳なじみのある曲だと思います。

インパクトがあり非常にキャッチーな曲なので
幾多のCMに使用され皆が知るのも当然だと感じます。


この当時のクインシー ジョーンズはマーキュリーの副社長であったのですが
たくさんの借財がありそれが為のヒットアルバム狙いであったとの話も聞きます。

後にマイケル ジャクソンとヒットをかっ飛ばす彼の下地は
この時期に醸成されたものかも知れないですねぇ。


さてこれほど人口に膾炙する「ソウル ボサノヴァ」ですが
ジャズ喫茶ではほとんど聞かれることはなかったと思います。

一つにはこの演奏がコンボではなくビッグ バンドのものであるという事と
あまりにポップ過ぎるせいであったのでしょう。


私もジャズを聴き始めてから随分してからこの「ソウル ボサノヴァ」を
全曲通して聴きました。

それまではは「ソウル ボサノヴァ」のイントロから十数秒を
CMで聴いていたにすぎませんでした。


はじめてコンプリートにこの曲を聴いて驚いたのは
フルートのソロが流れ出したときでした。

エッジの効いた独特のそのフルートの音色は
間違いようもなくローランド カークのものであったからです。

ジャケットを確認しても間違いなくカークのクレジットがあります。


よく考えてみればこの時期ローランド カークは
マーキュリーからアルバムを出している時期なので
ここに彼がいるのは不思議ではないとも言えます。

ローランド カークのサイドメンの作品として思い浮かべるのは
まずはチャールズ ミンガスの諸作品です。

という事でシリアス路線のミンガスと
ポップなクインシーの作品の落差を思うと
「ソウル ボサノヴァ」でのカークの演奏は若干の不思議さを感じさせます。

実際カークのフルートが始まるとちょっと曲が締まったように思います。


アルバムの一曲目に「ソウル ボサノヴァ」が配置されているのですが
二曲目にはなんとミンガスの名曲「ブギー ストップ シャッフル」が演奏されています。

ボサノヴァと銘打っていながらこのミンガス作品はアルバム中で
若干違和感があるのは否めないですなぁ。
個人的には好きですけれども(笑)

「ブギー ストップ シャッフル」のレコードとしての初演は
「ミンガス アー ウム」というアルバムに記録されていますが
そこにはカークはまだ参加していません。

この曲がアルバムに採用された経緯も気になるところですなぁ。


さてこのアルバムただただポップなつくりかというと
そうでもないんです。

ソリストになかなかにアクの強いクラーク テリーや
ポール ゴンザルベスという演奏者を配していて
しっかり聴けばジャズ的な聴きごたえもあります。


「ソウル ボサノヴァ」があまりにも有名ですが
アルバムを通して聴くことをお勧めします。



うーんちょとっと不思議なんですけれど
ローランド カークってこんなアンサンブルが重視される
ビッグバンド作品で譜面を使わずにどうやって演奏したんでしょうかねぇ???







この記事で紹介したアルバムです
「ビッグ バンド ボッサノヴァ」



2017年07月17日 埋もれたCD紹介 トラックバック:0 コメント:0

ジャズの映画ってなんだかなぁと思いつつ"Miles Ahead"



ジャズの著名ミュージシャンを題材にとった映画が数多く制作されています。

あまり映画を見ることはないのですが
ジャズメンについての映画ならば少しは興味がわき
いくつかの作品を目にしています。

多分10作品近くの映画を見ていると思いますが
率直に言って満足のいくものはありませんでした。

と言いながら
またもやマイルズ デイヴィスを題材にした
"Miles Ahead"を鑑賞しました。


副タイトルに空白の5年間とあります。

ジャズファンであればすぐにわかるとおりに
「アガルタ」「パンゲア」の発売から「ザ マン ウィズ ザ ホーン」までの
演奏中断時期の謎を明かす内容となっています。


このようなブログの中で映画のネタばらしをやるのも何なので
詳細は控えることとしますがなんとも内容は陳腐なものでした。

まるでマイルズがちんけなチンピラのように描かれています。


マイルズや周辺にいた近しい人たちの伝記やインタビューから得た知見からすると
数多くのでっちあげがあたかも真実のように映画では語られています。

またなおのこと悪いことに
いくらかの真実に従ったエピソードを捻じ曲げて絵描いていたりして
この映画の内容を信じてしまう人も多いんじゃないでしょうか。

信憑性は大きな河のドラマ程度だと思ったほうがいいです。


映画のストーリーの進行が時系列に沿って進むのではなく
過去の出来事が随時挿入されるので
ある程度のマイルズについての知識がある人はともかく
一般の人には展開がよくわからなくなると思います。


時代考証も良くなされているとの評判でしたが
私が気づいた限りでも確実な誤りが複数見られました。

映画そのものは全く面白味を感じませんでしたが
その点ではクリント イーストウッドの「バード」のほうが
数段も優れていると思います。


あと これを言っちゃあお終いよ なんですが
マイルズを演じた役者さん(なんと監督も)に
鬼才マイルズのオーラのかけらも感じられないのがつらいです。

数多くのジャズメンを題材にした作品が芳しくないのは
ひとえにこのせいであるともいえるのですけれども

この点を含めてですが
個人的にジャズメンを扱った映画で成功していると思うのは
「ラウンド ミッドナイト」ぐらいです。


ここでは主人公をデクスター ゴードンが演じていて
なかなかの役者ぶりです。

演奏のシーンやミュージシャン役にも
ボビー ハッチャーソン、ハービー ハンコック、ロン カーターなどがつとめ
満足の出来るものになっています。


この「マイルズ アヘッド」にも最後の演奏シーンで
カメオ的な役回りでウェイン ショーターやハービー ハンコックが出ているのですが
年齢としてはマイルズより若い彼らがもう老人となっているので
設定時点のマイルズとの関係性が破綻していて苦笑いしました。


「マイルズ アヘッド」
個人的には★です   カァーーーッ



2017年07月13日 埋もれたCD紹介 トラックバック:0 コメント:0