どんどん増殖し混迷をきわめる"Never let me go"

前回に続きリヴィングストン&エヴァンズのお話。

彼らの作った曲はヴォーカリストには取り上げられても
なかなか楽器奏者には演奏される機会が少ないと書きました。


その中でも"Never let me go"はリヴィングストン&エヴァンズの作品中
もっともインストで録音が残されている曲だと思います。

曲の内容はタイトルから類推されるとおりで
 あなた無しでは生きていけない
とせつせつと歌うバラードです。

"Never let me go"はどうやら日本未公開であるようですが1956年公開の
映画“The Scarlet Hour”のテーマとして作成され
ナット キング コールが歌いヒットしています。

前回の"Mons Lisa"といいナットとリヴィングストン&エヴァンズは
相性が良くてよくトリオで仕事をしているようです。
 (先の六、八、坂本九みたいですな)



私がこの曲に注目させられたのは

"Crossings" (galaxy)
Red Garland


オリン キープニューズが手掛けるギャラクシー発レッド ガーランドの「クロッシングス」でした。

77年末に録音された作品ですがこの時期ガーランドは地元でセミリタイア状態であったところから
本格的に活動を再開させようとしていたところでした。

かつてのガーランドの演奏振りを知るものとしては
本作でのガーランドは線が細くどことなくおずおずした感じがあります。

その風が"Never let me go"というラブバラードに絶妙にマッチして
このアルバム中での白眉となる演奏に仕上がりました。


当時新譜としてこの作品を手にしたときに"Never let me go"と言う曲が
私の心に刻まれたと言っていいと思います。

調べてみると56年という比較的新しい曲であったのも印象に残りました。
もちろんリヴィングストン&エヴァンズの名前も。


さて一旦"Never let me go"が記憶に残ると
それ以降様々なアルバムでこの曲を耳にするようになります。

"The Quintet - Live!" (prestige)
Charles McPherson


チャールズ マクファーソンが師匠のバリーハリスをピアノに迎え
幼馴染のロニー ヒリヤーを相方にしてファイヴ スポットでのライブ録音盤。

そんなメンバー構成もあって非常にピッタリと息の合った
くつろぎに満ちたライブハウスでの演奏が収められています。

後のザナドゥ盤の「ビューティフル」で聴かれる通り
マクファーソンはバラードを美しく謳いあげるが上手な人ですが
ここでも"Never let me go"の曲調の良さを最大限に引き出しています。

マクファーソンの初期の代表作でしょうに入手困難は残念。


その他にも"Never let me go"は
ビル エヴァンズ
ジョン ヒックス
マッコイ タイナー
ロイ ハーグローブ
などなど数多くのジャズミュージシャンたちの作品に録音が残されています。

もちろんヴォーカルものも。



ここでちょっと"Never let me go"で気を付けないといけない
ことがあります。

"Never let me go"  (bluenote)
Stanley Turrentine


スタンリー タレンタインがオシドリコンビで人気レ-ベルに残した
その名も"Never let me go"

当然この作品もリヴィングストン&エヴァンズの名曲がと 
思いきや さにあらず
ここでの"Never let me go"はジョー スコットの作品で
いわゆる同名異曲ってやつです。

このジョー スコットの"Never let me go"もまたソウルの世界では
なかなかの有名曲でしてゆえにタレンタインの作品に。

お間違いなく!


で ですね
ここに"Never let me go"の混迷にさらに拍車をかける事態が……

"Never let me go"でピンと来た方いらっしゃるでしょう?
そうノーベル賞作家カズオ イシグロの代表作"Never let me go"

この作品映画化に舞台化がおこなわれ
イギリスばかりが日本でもテレビにもなるしまつ。

それらの劇中の挿入歌やテーマ曲が作成されて
"Never let me go"とクレジット。


これでも十分にややこしいのですが
さらに古くはジョニー ティロットソン(涙くんさよならのひと)や
最近ではフローレンス+ザ マシーンのヒット曲
さらにさらに日本人歌手の同名異曲まで 
ぞろぞろぞろぞろぞろぞろぞろぞろぞろぞろ"Never let me go"

どうぞご注意を




この記事で紹介したアルバムです
「クロッシングス」 レッド ガーランド




2018年04月26日 埋もれたCD紹介 トラックバック:0 コメント:0

リヴィングストン & エヴァンズはアメリカの六と八

前回の記事でリヴィングストン&エヴァンズの曲を取り上げましたが
本朝では今一つ彼らの知名度がないようなのでもう少し。

作詞、作曲には決まったコンビでの作品が昔から多く作成されています。

有名なところではガーシュイン兄弟であったりロジャーズ&ハート
などでしょうか。

彼ら二組によって残された作品の多くはスタンダードとして
今もなお多くのミュージシャンたちに演奏され続けています。

「バット ノット フォー ミー」や「ラヴァー」などあまりにも有名ですね。


それに対してリヴィングストン & エヴァンズの作品は
それほど多くスタンダード化していないと感じます。

それらは上記の有名作詞作曲コンビが活躍したのが
ミュージカル全盛期であった為だと言えます。

40年半ば以降活躍のリヴィングストン&エヴァンズの主な戦場は
映画でありテレビとなっていました。

ここらへんが知名度の差になっていると思えます。


二人の作品にもヴォーカリストの取り上げる曲はいくらかありますが
楽器奏者が彼らの曲を演奏するのは限られていると思います。

ヴォーカリストが好んで歌う作品としては
先ずは「ボタンとリボン」があります。

私はまだ生まれる前の事なので伝聞ですが
映画「腰抜け二丁拳銃」の主題歌であった「ボタンとリボン」は
日本でも池 真理子さんの歌唱で大ヒットであったそうです。

うちの母親なんかが
「バッテン ボー」なんて口ずさんでいたのを覚えています。


どちらかと言うとカントリー、ソウル系のシンガーたちが良く歌うものとして
「タミー」があります。

全く個人的な思い出ですがその昔 桂 小軽が奥さんとテレビで
「タミー」を歌ったのがとても意外であったので記憶に残っています。


ヒッチコックの名作「知りすぎていた男」の主題歌
「ケ セラ セラ」もつとに有名です。



しかし何といっても有名なのがナット キング コールの大ヒット作
「モナリザ」

日本でも大ヒットしていますし美空ひばりの歌唱でも有名です。

ヴォーカルものはたくさんあってもあまりインスト物はないのですが
わすれていけないのが御大ソニー ロリンズの作品

"Sonny Rollins +3" (milestone)
Sonny Rollins


ワンホーンで吹き込まれた90年半ばのロリンズの代表作です。
溌剌と一気呵成に歌い上げた「モナリザ」が絶品です。



えーっと またちょっと長くなってきたので次回に



この記事で紹介したアルバムです
モナリザ




あ、表題の
六と八ですけれどもお若い方に
  中村 八大&永六輔のことですね「上を向いて歩こう」だと
  坂本 九も加わって六八九




2018年04月23日 埋もれたCD紹介 トラックバック:0 コメント:0

金銀パールじゃなくてルビーと真珠のお話


"SECOND GENESIS" (VeeJay)
Wayne Shorter


記事のタイトルに「金、銀、パール……♪」と書いておきながら
ブルーダイヤのプレゼントセールなんて今の子は知らないかなぁと思ったんですが
いや 氷川きよしで復活してたよなぁなんておもいだしはしたものの
それも十年以上も前のはなしだよなぁ と思う今日この頃でございます。


上記のアルバム
ウェイン ショーターの「セカンド ジェネシス」に
"The ruby and the pesrl"と言う曲が収められています。

映画やTVで活躍したリヴィングストン&エヴァンズの作品ですが
あまりジャズでは取りあげられる曲ではなくスタンダードとは足りえず
知る人ぞ知るという曲だと思います。

知名度は別として「ルビーと真珠」と言うこの曲は
とても美しいメロディーで綴られていてしかもエキゾチックで
儚い曲想はとても日本人好みであると感じます。

この曲を演奏するジャズメンが少ないのは不思議な気がするくらいです。


さてこの曲を冒頭の作品でウェイン ショーターがワンホーンで
名演奏に仕立てています。

ちょうどジャズメッセンジャーズに在籍していたころで
ドラムに御大アート ブレイキーをむかえ
ピアノには後に同グループで同僚となるシダー ウォルトンと共に
ハードバップの流儀でざっくりとした感触の演奏になっています。


このアルバム「セカンド ジェネシス」ですが録音は1960年
ところが何故かすぐにリリースされることはなくお蔵入り。

1974年になってようやく発売されたと言ういわくつきのアルバム。

すでに次代のジャズ界を背負うテナーサックスとして注目を集めていた
ショーターのアルバムなのにこれはいったいどういう理由でしょう?



先ほど述べたとおりにあまり録音されることのない「ルビーと真珠」ですが
ジャズの名レーベルブルーノートで発売されたアルバムに収録されてます。

"Back to the Tracks" (blue note)
Tina Brooks


ブルーノートのお馴染みのリズム隊とともに
ブルー ミッチェルのトランペットと「ルビーと真珠」が演奏されています。

ティナ ブルックスの演奏にはもともと中近東風の味わいがありますが
ここでもアラビックな感じで「ルビーと真珠」が料理され
そこにニックネームのブルーよろしくミッチェルのラッパが絡んで
なんとも言えない良さがあります。


このティナ ブルックスの「バック トゥ ザ トラックス」ですが
先の「セカンド ジェネシス」よりも一層のいわくつきのアルバムです。

ブルーノートのコレクターたちの間では非常に有名で
もう伝説になったアルバムと言えるでしょう。

このアルバムはブルーノートのインナースリーブに印刷された
アルバム カタログにジャケット写真とともに掲載されていたのですが
実際にはブルーノートからは発売されることが無かったのです。

今のようなネット社会ではなく容易に情報が収集できる時代ではなかったので
このカタログを根拠にティナ ブルックスの「バック トゥ ザ トラックス」を
探し求めるコレクターが数多発生する事態となりました。

探せど探せどあるはずもなくこのアルバムは
正真正銘に幻の名盤となったわけです。

正確に言えばジャケットの無いテストプレス盤が数枚存在しますが。


アルバムの録音は1960年ですが初めて実際のアルバムとして
モザイクからティナ ブルックスのコンプリートセットとして
発売されたのは1985年の事です。

アルバム単体としてCD化されて容易に手に入れることができるようになったのは
なんと1998年の事でした。


「バック トゥ ザ トラックス」も先の「セカンド ジェネシス」も
録音は1960年。

両アルバムがすんなりとリリースされていれば
"The ruby and the pesrl"はもっと巷間に認知されて
素晴らしい演奏も増えたんじゃぁないでしょうか。

「ルビーと真珠」だけに宝石にまつわる
何かの呪いが……  なんてね。




"Eternal" (Marsalis Music)
Branford Marsalis


もう"The ruby and the pesrl"が演奏されるアルバムなんて
無いのかなぁと思っていたところで突然に発売されたのが
2004年のブランフォード マルサリスの上記アルバム「エターナル」

アルバム冒頭の重要曲に"The ruby and the pesrl"が
収録されています。

中年になったブランフォードが過去の名演になぞらえるわけではなく
等身大の現代人としててらい無く歌い上げるさまがとても良いです。

売らんかなのありきたりのバラード集としての作品ではなくて
じっくり聞きごたえの作品に仕上がっていて
ブランフォードの代表作としても評価してよいと感じます。

自作のバラード作品の一曲目に「ルビーと真珠」を配した
ブランフォードのセンスに拍手を送りたい気持ちです。



マルサリス家のジャズ伝統一家の力で
"The ruby and the pesrl"の呪いも解けて
以降は名演が続出するんじゃぁないかなぁ……

なんて思っていたんですけれども
2018年を迎えてもその気配は全くなし。

どこかにこの名曲を取り上げてくれるミュージシャンは
いないでしょうかねぇ    うふふふふふふ



この記事で紹介したアルバムです
エターナル



2018年04月19日 埋もれたCD紹介 トラックバック:0 コメント:0

JBL初ステレオ専用スピーカーパラゴンを贅沢にモノラル使い



最近はほぼ気にすることなく順調に過ごせていたオーディオ機器なのですが
突然に片チャンネルの聴取ができなくなりました。

私の使用しているオーディオ機器はオーディオソースの入力部分を除けば
全て1960年前後の装置達です。

従って私同様たまには調子が悪くなっても仕方がないのですが
こうなると素人にはお手上げです。

専門のヴィンテージオーディオの技術者にゆだねるしかなく
当分の間今まで通りの満足なオーディオライフは送れなくなりました。


うーん 困った 困った こまどり姉妹
                  (©譲二)

  …… あっ モノラルなら聴けるやんか!


私の使用しているプリアンプはコントローラーでモノラルでの再生が可能です。

ならば壁際に設置しているパラゴンの方チャンネルで再生すれば
モノラル音源の再生は可能です。

レコードに関しては入力部分にステレオ型のモノラルカートリッジも使用すれば
なんとかステレオ盤も再生できます。

早速片チャンネルだけの使用でモノラルレコードの再生を行ってみると
これはこれで魅力ある再生音が楽しめます。

音場感やワイドレンジなどは当然ステレオにはかないませんが
モノラル独特の良さは捨てがたいものがあります。


世の中のジャズファン(いやオーディオファンか)にはステレオ盤より
モノラル盤のほうが良いという方が結構いらっしゃいます。

実のところその多くの理由はステレオ再生が
モノラルを再生するよりはるかに使いこなしが困難だからです。

当たり前のことですが本当にモノラル録音のほうが良ければ
ステレオ録音は廃れてしまっているはず。


ステレオの再生には左右チャンネル間のセパレーションの問題や
等しい音質やバランスが必要です。

それにはそれなりのクオリティーのオーディオが必要ですし
二つのスピーカーがベストに設定される必要もあります。

限られた予算と部屋のスペースではこれらを実現するのは
なかなかに難しいと言わざるを得ません。


しかもモノラル録音時代のほぼ50年終わりまでのソースには
それほどのワイドレンジで収録されていません。

モノラルを十全に再生するのはステレオの再生より
はるかに簡単なのです。


この機会にしばらくはモノラル再生に特化することにしました。

そしてモノラル録音の美点が再確認できました。

何といってもその再生音がきっぱりと潔いこと。

音のにじみや濁りがほとんど目立たずに
とても音像がくっきりしています。

ステレオの再生ではこのスッキリ感はなかなか難しいです。

もうモノラル録音だけで充分じゃないかと思う人がいるのも
うなずけるというものです。

十分に不要な輻射音を排除した部屋の設計が
この再生音により一層輝きを与えています。

もちろんホーンスピーカーという特徴も再生音に
大きく寄与しています。


いやぁ これはこれで素晴らしいオーディオライフです。

窮鼠かえって猫をかむ じゃなかった
怪我の功名ですな


というわけでしばらくモノラル再生の日々です。









2018年04月11日 オーディオ再生 トラックバック:0 コメント:0

Black is just the color of tis CD カラーレコードならずカラーCD


"Juneteenth" (Vision Fugitives)
Stanley Cowell


スタンリー カウエルの「ジューンティーンス」は15年の5月にリリースされたものです。

カウエルは個人的に好きなミュージシャンですが
大した理由もなく購入を見送っていました。

先日たまたまネットでsale販売されているのを見つけて
ラッキーと思い早速購入しました。


送られてきたCDをみてビックリ!
ジューンティーンス レーベル面
ジューンティーンス 記録面

CDのレーベル面が上の写真でして
下の写真はなんと記録面。

ご覧の通りにCDの記録面がツルツルピッカピカの真っ黒。

レコードにあまりなじみのない方はご存じないでしょうが
カラーレコードというのはままある話。

ファンタジーの諸作やパブロの一部なんかはそうですね。

けれども私真っ黒けっけのCDは初めて見ました。

ポップス辺りではよくある話なのかしらん。

音楽の中身を聴く前にあっと驚いたわけです。


さてアルバムタイトルの"Juneteenth"というのも初耳な言葉で
ジーニアス英和には記載されていず(どこがジニアスじゃあ)

ネット時代に感謝しながらポチッとな
ジューンティーンスと言うのは1965年の6月19日がなまったものだそう。

その日は奴隷解放が遅れていた最後の州テキサスが陥落し
奴隷解放記念日に同州が選定したのだそうです。

それに倣って他州も"Juneteenth"を記念日に制定しようという
運動があるようです。


さてその記念日の150周年を記してスタンリー カウエルが
オーケストラ組曲を書き下ろし自らピアノ版を増補作成し
演奏をしたものがこの作品であるとのこと。

 それで真っ黒けっけのCDか  ポンッ!


特筆すべきは添付のブックレット
30ページ程もあり中には当時の黒人達の様子を知ることができる
写真が掲載されています。
  (予想通りに閲覧注意なものも)

最後にはご丁寧にリンカーンの同宣言まで。

このCDが米盤ではなく仏盤で製作されたのもわかる気がします。



さて中身はと言いますと
これまでに幾度も組曲そしてソロピアノ作を発表したカウエルのこと
作品の水準は心配ご無用。

ただし組曲という構成そして他の演奏者がいないソロ作品ということで
即興性至上主義な方には満足いただけないかもしれません。
  たぶんだから セールだったんでしょうな

言い換えるとジャズ的な演奏に興味のあるクラシックファンには
おすすめな作品とも言えます。

作品中からは表題曲ということもあって
南北戦争を示す曲や奇妙な果実のモチーフ
そしてカウエルのゲームズや幻想組曲などの断片が
コラージュのようにちりばめられアイヴズを連想させたりします。

アメリカの文化や歴史背景に対する興味を持っていれば
尚楽しめる作品だと思います。

当然のことながらカウエルのストーリーテリングを楽しみとしている方にも
推薦できるアルバムです。


ちょっと裃付けたスタンリー カウエルてな感じですね。



この記事で紹介したアルバムです
"Juneteenth"









2018年04月06日 新譜紹介 トラックバック:0 コメント:0