ショーターの鳥の歌




"1+1" Wayne Shorter Herbie Hancock (Verve)

 ジャズの世界でも天才と称される人が少なからずいらっしゃいます。個人的には天才という言葉を使うのにはかなりためらいがあってめったに使わないのですが、ウエィン ショーターはその名に値する人だと思っています。
 ショーターの場合あちらの世界の人というよりは、全く違う異世界からやってきた人のような感じがあります。まさにショーターワールドとしか言いようの無い世界に、たったワンフレーズで聴く人を引き込む様は、妖しく蠱惑的な力に満ちています。
 そのショーターとは永年の盟友として活躍しているハービー ハンコックもまた人々からは天才と称されることも多いようです。
 オーソドックスなジャズからブラコン、サントラ、果てはオリンピックの公式音楽に至るまでその活躍のフィールドは多岐にわたります。しかしながら私はハンコックの事を天才と呼ぶことには躊躇するものがあります。彼の才能を認めないわけではありませんが、彼を称する言葉には秀才という方が適切なように思えます。
 どんな場所におかれてもその才を発揮するハンコックはジャズの枠組みを超え多くの人々に受け入れられています。他方ショーターの方は彼の造り出すショーターワールドに遊ぶことができる者のみが、彼を賛美するのではないかと思います。
 
 マイルズのグループの頃よりの付き合いで、その演奏も人となりも良く分かりあう二人だけのアルバムとはいったいどんな結果をもたらしたのでしょう
 丁々発止とわたりあう息をもつかせぬアルバムを期待した方も多かったでしょうが、ハンコックは終始ショーターの演奏をサポートに回っています。
 そのショーターの歌いぶりというのがいつものショーターワールドとは少し違っています。幻想的であったり空想的、あるいは魔術的であったりするショーターの演奏が、このアルバムではいつに無く人間的な肉声を感じさせるのです。
 それも朗々とうたいあげるというよりは絶唱というのにふさわしい唄い方になっています。これほど生々しくショーターの身体をさらけ出した演奏は今までには全く無かったと思います。
 そのショーターの歌をこの世の中で一番理解しているであろうハンコックが、受けに回りながらその魅力を最大に惹き出していてさすがだなと思わせます。
 先ほどとても人間的なと言いましたが、それと同時にきわめて純度の高い世界へと昇華した美しい歌をもそこに聴き取ることができます。
 
 気楽に楽しむというには全く不向きですが、他にあまり例を見ない美しい世界を現出させた素晴しいアルバムです。そういった音楽に対峙しようと思われる時には是非聴いてみていただきたいなと思います。

 あまり穿った見方は好きではないのですが「いったいショーターに何が起こったのか」と考えてしまいます。




この記事に記載のアルバム

「1+1」 ウエイン ショーター

2006年09月05日 埋もれたCD紹介 トラックバック:0 コメント:4

きのう、sonnyがここでsonnyはここに演奏するつもりだった。
しかしながらsonnyがここで絶唱も躊躇するはずだったの。

2006年09月15日 BlogPetのsilver URL 編集

きょうsilverは、ここでsonnyと世界っぽい演奏するつもりだった?

2006年10月13日 BlogPetのsilver URL 編集

こんにちわ。
私にとってショーターって、掴み所のわからない人なんです。
好きなアルバムも多いのですが、聴きたいと言う気持ちに中々ならないものも多いのです。
私にとってイメージの難しい人ですが、そこが魅力的で聴きたくなるのかもしれません。

ハービー・ハンコックは、頭の良い人ですね。計算をしない本能的な自分と、シッカリと計算して作り上げた自分を上手に使い分けている人だと思います。私は時々その部分が、鼻についたりするんですが(笑)。

2006年10月19日 falso URL 編集

falsoさん、こんにちは。
 ショーターという人はやはり天才と言うべき人なのだと思います。中々万人受けすると言うわけにはいかないようですね。
 ハンコックは常に実行する前に頭の中で考えを纏め上げてから行動しているように聴こえます。良くも悪くも優等生なのだと感じます。

2006年10月20日 Sonny URL 編集












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