ギル コギンズの置き土産

Better Late Than Never

” Better Late Than Never" (Smalls)
            Gil Coggins
       「ベター レイト ザン ネヴァー」 
                 ギル コギンズ


ギル コギンズ名義のリーダー作を年末に見つけたときには「あれっ、まだ生きていたんだっけ」と少し驚きました。

最近も大物ジャズメンが相次いで鬼籍に入りましたが、それほど注目を集めていないミュージシャンについてはその生死が判別できなくなっています。私の年のせいもあるかもしれません。

ギル コギンズの名を聞いて即座にあのミュージシャンかと思い当たる人は、かなりのジャズを聴いてきた人だと思います。数は少ないのですが、ジャッキー マクリーンやソニー ロリンズにジョン コルトレーンそしてマイルズ デイヴィスといった著名ミュージシャンとの録音を残しています。

もっとも一般的に知られるのはブルーノートの"Miles Davis, Vol. 2"であろうと思います。この一枚に名を残しているだけでも無名ミュージシャンとして看過するわけにはいかないでしょう。


ちょっと調べてみると生年は複数の説があるのですが、マイルズより二つ年上であるという記述を信用すると1924年生まれということになります。
残念なことにやっぱり2004年に交通事故により亡くなられていました。

50年代の録音を除けば知る限り1990年にInterplayより初リーダー作"Gil's Mood"を録音するまで、活動らしい活動を知ることが出来ません。アメリカ本国では演奏をおこなっていたのかもしれませんが、例に漏れずというべきか相当なヘヴィドリンカーということが録音の途絶えている理由のようでも有ります。


"A Long Drink of the Blues"というマクリーンのアルバムがあるのですが、表題曲でミュージシャン達がソロの順番を間違えてしまいやり直しをする場面がそのままアルバムに収録されていることが珍しい作品です。

その本来であれば没テイクになる曲でゴツゴツとした印象的なイントロのピアノを弾いていたのがコギンズとの初めての出会いでした。

朴訥なピアノのタッチがとても個性的でマル ウォルドロンやモンクを連想させました。


その次に彼のピアノに出会ったのは前出のマイルズのブルーノートのアルバムでした。ちょっと引っ掛かり気味なピアノがコギンズの手になるものでした。こんな所に彼がいたのかと思い聴いていましたが目を瞠ったのはバラードの"I Waited for You"でした。

バラードを演奏させれば並ぶ物のいないマイルズのラッパに負けず劣らず素晴しいピアノをコギンズが歌わせていて、この曲により彼の名前は私の記憶の中にしっかりと刻まれることになりました。

コギンズは自分自身の中にしっかりと曲を掴まえて自信に満ちた音を放っていました。


さて、冒頭に紹介したアルバムですが録音は2001年と2002年に行われたものでトリオによる演奏です。

ミドルテンポでの"I'm Old Fashioned"で演奏の幕が開くのですが、ギル自身のリズムが少しヨレ気味でなかなか難しい出来です。

次の曲がミンガスの"Smooch"でスローテンポで演奏されます。これがなんとも秀逸でコギンズ自身がこの曲を自家薬籠中のものにしていることがわかります。先の曲では気になっていたリズムのヨレが、彼自身の肉体の中にある心地よいビートであると聴き取れてまたとない魅力を感じます。

マイルズの作とされる(コルトレーン作との説も有力)"Vierd Blues"はコギンズの中で見事に換骨奪胎され、スローテンポで鈍く怪しい光を放ち、私の耳をがっちり捉えて放しません。


しっかりと彼自身の中で脈動する大きなうねり。彼のみが持ち得るスイングといってもよいでしょう。

どうやら、ギル コギンズの演奏での最大の特色はスローテンポにあるようです。


ここにいたって気が付いたのですが、彼はホレス パーランのようにどちらかの手が不自由ではないのかなと想像します。どなたかご存知ならご教示ください。

いかな理由かはわからなくともこの個性的なスイング感に私は大きな魅力を覚えます。


” Better Late Than Never"とは良く言ったもの。彼の晩年にこんなに素敵なアルバムが残されたことを素直に喜びたいと思います。


この記事で紹介した作品です。
Better Late Than Never


2008年01月10日 新譜紹介 トラックバック:0 コメント:2

ギル・コギンズと言う名前、知りませんでした。
が、"Miles Vol.2"に参加しているということは演奏も聴いたことがあるはずだし、名前も見かけているはずなのです。
いかに細かくチェックしていないか、思い知りました。(笑)
この機に聴きなおしてみたいと思います。
もちろん、このアルバムにも興味あり、です。

2008年01月11日 piouhgd URL 編集

piouhgd さん、こんばんは。

ギル コギンズの名前でピンとくるようならかなりのつわものだと思います。
サイドメンの演奏まで耳に出来ているということですからね。
ブルーノートの"Miles Vol.2"をお持ちのようなので"I Waited for You"を聴いてみてください。
この演奏を気に入られたならばこのアルバムは買いだと思います。

2008年01月11日 Sonny URL 編集












管理者にだけ公開する