ブルーノートでジャズが語れるか? 目黒の秋刀魚のお味は?



 
 ジャズ喫茶をやっていた頃に気がついてはいたのですが、最近ネット環境を手に入れてから、尚一層感じることがあります。本当に皆さんブルーノートがお好きですね。私のようなぼんやりとした人間が考えることではないのですが少しばかりブルーノートのことを考えてみました。
 「ブルーノートでジャズを語るのは無理ではないか」というのが私の思いです。ここで間違いの無いように申し添えますが、このブログをお読みいただければわかるとおり私はジャズは好きなものを聴けばいいと固く信じています。したがってブルーノートが好きだということには何の反対もないのです。疑問に思っているのはブルーノートだけでジャズを語ることなのです。
 このことは結構大きな事柄でここですべてを記することはできないのでざっとした事だけを述べることにします。
 ブルーノートが他のレーベルと比べて非常に高い水準で一貫した基調を持った作品を作ることができたのは、ひとえにアルフレッド ライオンというプロデューサーの力によるものです。これには面白い逸話が残されています。
 一般のレーベルではプロデューサーの名前がジャケットの裏面に記載されていますが、ブルーノートにはそのような記載がありません。そのことを不思議に思ったインタビューアーが、問いただした時のライオンの答えがふるっています。「私がブルーノートだからだよ。」ブルーノートは何から何まですべての面でライオンの理想とするジャズを記録したものであったからです。
 無論、実際に作業に当たったのはデザイナーのリード マイルズであり、録音技師のヴァン ゲルダーであり、盟友の写真家フランシス ウルフであったかもしれません。しかしそれらのすべての過程にはライオンの妥協のない目が注がれています。
 それが証拠に、ゲルダーやマイルズは他のレーベルでも仕事をしていますが、それらはブルーノートでの仕事とはかなり仕上がりが異なっています。ゲルダーは言います。「僕はライオンの言うとおりに録音しただけだよ。」
 まさにライオンはブルーノートそのものだったのです。
 ブルーノートはミュージシャンにリハーサルに対するギャラを支払ったことも知られています。また本番でも納得のいくまで何度もテイクを取り直しました。そうして細心の注意を払って作られた作品でも、最終的にライオンが気に入らなければお蔵入りになり発売されることはありませんでした。
 ライオンの思うとおりに一点の瑕もなく磨きこまれたように作られた作品は、彼が聴いてほしいジャズの部分が明確に強調されているためにどんな人にも非常にわかりやすいのです。
 ところがそうやってリハーサルを重ね瑕のないものを選択するといったブルーノートの手法は大きな欠点も兼ね備えているのです。ジャズというのは今そこで出来上がったというフレッシュさが身上なのに、それがそがれてしまうという大きな点です。
 エリントンがコルトレーンと共演したときに、幾度もテイクを取り直そうとする彼に対して「いい演奏というのはファーストテイクで出来上がるものだよ。」と諭したのは良く知られています。ライオンがブルーノートの作品に対して行った手法は、ジャズの大切な部分を壊しかねない諸刃の剣だったのです。
 そんなブルーノートの作品の中にあって、その欠点を感じさせないいくつかのアルバムも存在します。ロリンズの「ヴィレッジヴァンガードの夜」がそうです。稀代のインプロバイザーであるロリンズにとってはライブ盤ということも手伝ってライオンの呪縛をまったく受けなかったように見えます。
 また、マイルズ(クレジットはキャノンボールですが)の「サムシングエルス」はブルーノートの手法を最大限活かした傑作だと思います。まったくノンプロデュースでの逆の意味での名盤は「プラグドニッケル」でしょうが比べてみるのも面白いと思います。
 先に紹介したコルトレーンが生涯でその出来映えに一番満足していた作品が、「ブルートレイン」であったというのもとても興味深い話だと思います。
 本来であれば、このような大きなテーマに対してはこうして大雑把にお話しするものではないと思います。機会があれば詳細な確認を伴いながらまとめてみたい気持ちがあります。
 またこの記事がこれからジャズを聴いてみようという皆さんにはほとんど役に立たないであろう事をお詫びいたします。
 「ブルーノートだけを持ち上げるのはどうもなあ」という私の思いをどこかに記しておきたかったのです。

2005年08月11日 象をなでながら考えるJAZZ トラックバック:0 コメント:2

 私はブルーノートがジャズ・レーベルの中では一番好きです。多分、当たり外れが他のレーベルより少ないのと、ジャケットが美しいという理由だと思います。しかしSonnyさんの記事を読んで色々と考えさせられました。そのことを一つ一つ書いているときりがありませんが、もう少し他のレーベルにも目を向けてみようかと思います。
 別件ですが、リンクさせて頂いてもよろしいでしょうか?

2005年08月19日 rollins1581 URL 編集

Sonny
 申し添えますが私もブルーノートが好きです。記事と重複しますがジャズの魅力には、今まさにそこで音楽が作り出されていくといったフレッシュさが大きな部分を占めると思います。そのほかにもジャズのルーズな部分や不良性、偶然や蓋然性といったものをもジャズの良さだと思っています。
 そういった意味で優等生然としたブルーノートでジャズのすべてを語るのは難しいと考えます。
 rollins1581さんが他のレーベルへ目を向けようとするのはとてもいいことだと思います。
 リンクの件はBBSでお伝えしたとおりokです。よろしくお願いいたします。

2005年08月19日 Sonny URL 編集












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