音色の違いは一流のしるし ハンク ジョーンズ




"For my father" Hank Jones (Just in time)

 「ピアニストによってそのその人のピアノの音色があるんです。」という話を一般の方にすると、多くの方がそんな訳はないだろうという反応をなさいます。ピアノというのはかなりメカニカルな楽器なので、同一の楽器なら誰が弾こうが同じ音がするだろうと考えるようです。
 そのうえ管楽器やベースなど持ち運びが可能な楽器ならともかく、ピアニストは演奏場所に備え付けの楽器を弾くわけで、ピアニスト固有の音などありえないと考えられるのでしょう。
 管楽器などに比べてその違いがわかりにくいとはいえます。しかしながら、ジャズを聴く人たちの間ではごく普通にピアニストの音色について会話が交わされます。
 「最近は個性的な音色のピアニストが少なくなったね。」
 「クラシックからジャズに入る演奏家がふえたからですかね。」
といった具合です。ピアニストに固有の音色があるのは事実です。レッド ガーランド、エロル ガーナー、アーマッド ジャマルといったピアニストならば、いくつかの音を聴いただけでそれと判別がつきます。ですがけっしてブラインドなんか持ってこないでください、ねっ重寺さん。
 いったいどこからそんな音色の違いが出てくるのでしょう。まず思い浮かぶのはピアノのタッチです。次にペダルの操作によるもの。和音の使い方や左手と右手のタイミングによる音の重なり具合といったところも重要な気がします。まあ私はピアノを弾けませんので聴いて感じたことを書いてみた訳ですが。どなたかピアノをお弾きになる方のご意見も聞いてみたいものです。
 さてここで紹介するピアニスト、ハンク ジョーンズもとても魅力的な音色を持つピアニストです。まさにシルクのような感触や輝きそしてやわらかさを兼ね備えた音色だと思います。彼のピアノの音色を聴いていると、そのままいつまでもずっと聴いていたいという気持ちにさせられます。
 このアルバムはすでに幾枚かの録音で共演しているジョージ ムラーツ、デニス マックレルとのピアノ トリオでの演奏です。ベーシストのムラーツについてはすでにご存知だと思います。最近の彼のベースについてですが、晩年のレッド ミッチェルのような引っ張るようなノリが出てきたように感じます。
 ドラムスのデニス マックレルについてはあまり知られていないかもしれません。彼はベーシー バンドの最後のドラマーでした。ドラムについてはとても厳しいベイシーのことですから、それだけで堅実なドラマーであるとわかると思います。また数多くの歌伴も勤めていますし、シアリングのドラマーとしても有名です。
 アルバムで取り上げられている曲はおおよそスタンダードですが、ハンクらしく余り他の人が取り上げないような曲目も入っています。
 ハンクのピアノはいつもいつも水準の高いアルバムばかりで感心させられるのですが、このアルバムでの特色は彼のピアノがまさに歌っているところです。とてもスムーズにしかも空間を自由に使ってメロディアスに12の曲が奏でられます。そう、先述の素晴しい音色でです。彼のフレーズにまったく無理がないので、ソロをハミングですべて歌えそうな気がするくらいです。ジャズ歌手を志す人は少しつっこんでハンクのアルバムを聴いてみたらいいのではないでしょうか。
 少しばかりあら捜しをすると、アルバムの最初から数曲はリズム隊との調子が合わないのかわずかに演奏がギクシャクします。うるさいかたは4曲目のソフィスティケーティッド レィデイより聴かれるといいと思います。ほんとにわずかな瑕なのであまり気にならないと思いますが。
 ハンクさんは本当に昔からピアノが上手な方ですがまだまだいいピアノへと成長し続けているようです。それにお元気なようで、ユービー ブレイクを抜いて100歳のピアニスト誕生も夢ではないような気がします。うーん、ハンクさんのピアノを目指す人は健康管理も必要ですね、頑張ってください。

2005年08月14日 新譜紹介 トラックバック:0 コメント:0












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