円熟し若返るウエインショーターの演奏と共演者達の到達したところ



"Without a Net" (Blue Note)
Wayne Shorter Quartet
Wayne Shorter (soprano and tenor saxophones, whistling)
Danilo Pérez:(piano)
John Patitucci(bass)
Brian Blade(drums)
Valerie Coleman(flute)
Toyin Spellman-Diaz(oboe)
Mariam Adam(clarinet)
Jeff Scott(rench horn)
Monica Ellis(bassoon)





ウエイン ショーターの新譜「ウイズアウト ア ネット」が先日発表されています。
前作の「ビヨンド ザ サウンド バリアー」の発表が2005年のことですから
8年ぶりの新譜となります。

個人的には次回作が待たれるジャズミュージシャンというのは
かなり少なくなってきているのですが
ウエイン ショーターの新作は待ちに待ったものでした。

それに付け加えて驚かされたのは
このアルバムが久しぶりにブルーノートから発表されたことでした。


ご存知のとおりかつてショーターはブルーノートから
数々の名作となったアルバムを発表しています。

ショーターの作品がどのレーベルより発表されようとも
彼の音楽性が変わることは有るまいと思いますが
ブルーノートにとっては彼の作品を出版することによって
ハードコアなジャズをいまだ世に問い続けるレーベルというイメージを
保ち続けることにはなるといえるでしょう。

なにせ最近のブルーノートといえば
カントリー歌手やらポップス畑のミュージシャンの作品まで出しているので
ジャズのレーベルというイメージがかなりなくなってきているのは否めないですから。


前作が発表されてからショーターの調子があまりよくないといわれていたので
かなり心配していたのですがこの作品を耳にしてその心配は吹き飛びました。

正直なところ前作では少しばかり散漫な印象もありましたので
ショーターの年齢も考えると音楽的な限界も近いのかなぁと思うこともありました。

この作品を耳にしてそんなことはまったくの杞憂であったと感じました。


このアルバムを耳にしてまず感じたのは
ショーターの演奏のテンションの張り詰め方が尋常ではないということです。

彼のソプラノサックスの音色を聞いて
それが80歳に手が届こうという年齢のミュージシャンが演奏をしているということなど
どんな人にも想像ができないだろうと思います。

彼の演奏からはとんでもないテンションを感じると同時に
才能と歳を経た円熟した意思を感じることが出来ます。


細かく聴いていけばテナーサックスでの演奏では
フレージングにかつてのような切れのよさはなくなってきているのですが
ソプラノサックスの演奏では老いというのは感じられないどころか
切れさえも増しているのにまったく驚かされます。


サイドメンの各ミュージシャンたちも
パーマネントグループとして長く共演してきたことで
ショーターとピッタリと息が合っていて
過不足の無い演奏を繰り広げていて見事です。

理解ある共演者たちのおかげで
ショーターは余計なことを考えることなく
いかに自分自身の思いのたけをサックスに託して歌うかだけに専念しています。

歌の頭や終わりなどはまったく関係なく
自由自在に歌い始め歌い終わります。
なんとも卓越した境地ですなぁ。

サイドメンたちはショーターが
歌の高みをどれだけの高さにまで飛翔できるかに
こまごまと気を配っている様子が感じ取れます。

ジャズ界においてここまでの瞬発力をもって
歌を歌い上げるミュージシャンはショーターを置いて
見つけることはちょっと難しいように思います。



少しばかりこのアルバムに言わずもがなの欲を言うとすれば
ショーターの演奏にストーリーをつむぐという部分がほとんど無いのが残念です。

もっともストーリーテリングという要素は
「ペガサス」というホーンアンサンブルを加えた曲によって
十分に満足を得ることが出来ます。

こういった大きめのホーン陣を採用することによって
アレンジによる演奏部分が多くなることにより
ジャズのスリリングな演奏がそがれることがままあるのですが
この曲ではそういった弊害はまったく感じられません。

このことはとかくひらめきによる演奏だといわれる彼のフレージングが
結構ロジカルに考え抜かれていることの傍証ともなっているのではないでしょうか。

スコアによって作られた部分と
アドリブ部分の演奏が見事に融合していて
しかも先ほどの不満を感じていたストーリーテリングという表現が
雄大に演じられています。


ショーターは若き日よりアレンジメントの才能も高く評価されてきましたが
最近ではあまり注目されていなかったこの部分でも
「ペガサス」でその能力を十二分に味あわせてくれています。
 
 (このペガサスで演奏されるモチーフが日本の歌にあったはずですが
           思い出せません どなたかご存じないですか?)


ここからはまったくの私のわがままですが
このサイドメン達との演奏については
このアルバムで一つの到達点に達したのではという気がします。

だとすればマイルズがやってきたように
そしてショーター自身も行ってきたように
このすばらしいグループを発展的に解消して
次の地点へと向かうのが望まれますが……


それを望むのは聴き手のあまりにも強欲な要望でしょうな。





この記事で紹介したアルバムです
ウィズアウト・ア・ネット





2013年02月27日 新譜紹介 トラックバック:0 コメント:0












管理者にだけ公開する