されどスタンダード スタンダードが好まれ嫌われる理由



 
 ジャズを聴き始めて間のない方やジャズを意識しておられない普通の方達にはスタンダードの演奏はおおむね好意を持って受け入れられるようです。まず第一にスタンダードのたいていの曲がポップスやミュージカル・映画などでヒットした大衆曲であることが理由に挙げられます。したがってもともと一般の人にアピールするキャッチーなメロディやサビといったものが含まれているわけです。
 またスタンダードのスタンダードたる所以ですがそれこそ時代を重ねて様々な場所で演奏されるので、曲名までは知らなくてもどこかで聴き覚えがあるはずです。人というのはかなり保守的に出来ているらしく、新しいものには拒絶反応があるけれども、耳なじみのあるものは好まれる傾向があります。
 またスタンダードを演奏するにしてもバラッドとしての演奏が好まれるわけで、原曲をあまり壊してしまう演奏は嫌われることが多いようです。この辺の事情はエラ フィッツジェラルドは好まれ、サラ ヴォーンは敬遠されがちなのを見てもわかるとおりです。
 結局のところジャズの本質といわれることの多いアドリブという部分はすぐに理解されるはずも無く、たいていの方はメロディを追ってジャズを楽しむことになっているわけです。
 反対にジャズ通と呼ばれる人たちはスタンダードを軽視する傾向が見られるようです。ありきたりの曲をありきたりに4ビートに乗せてバラッドで演奏されても、聴き所が無く誰が弾いてもおなじではないか。というのがその大きな理由だと思います。
 一般の人にも受け入れられるような曲を耳に優しいように、ネームヴァリュウのある人たちに演奏させた商売向けの作品ではないか。あるいはアドリブをしようにもそれほどのオリジナリティを持ちえない演奏者が曲にもたれかかって(カヴァー)作品を作り上げたのではないか。
 こういった点がジャズ通の方がスタンダード集のようなアルバムを軽視する理由だと思います。実際にそういった作品が多く存在するのですが。しかしながら私はそれでもスタンダードを演奏し、またその作品に耳を傾ける必要が有ると考えます。
 幾度と演奏され語りつくされたスタンダードであってもそこへサムシン エルスを加えることは不可能では有りません。そういった作品を耳にするたびにその曲の新しい側面を発見し聴き手は大きな喜びを得るわけです。まあこれは中々生易しいことではありません。
 それと聴き手にとってもオリジナルの作品を一度耳にしただけでその真価を聴き取ることは容易ではありません。やはり何度も演奏を聴きなおした上でようやくその演奏の価値を認めることが出来るようになります。スタンダードの演奏を聴いた場合は聴き手としてもこれまでに数多くの演奏者による曲を聴いた蓄積があり、曲の構造もしっかりと把握できているわけです。
 したがって、演奏者がスタンダードを弾いてくれればその演奏から、
 プレイヤーはどんな先達から影響を受けているのか
 曲を解釈するのかただのモチーフとして扱うのか
 ストーリーテラーなのかアイデア重視なのか
 天才形か秀才形か
 芸術肌かエンタティナーか
 結局のところジャズをどれほど理解しているのか
といったところをたやすく聴き取ることができるわけです。いわゆる試金石の働きをスタンダードがしてくれるわけです。
 食堂の定番メニューみたいなものだと思っていただければいいと思います。シェフの気まぐれサラダではそのお店の価値はわかりにくいと思います。が、たまご焼きやオムレツといったものがおいしいお店ならそのお店は確かだと思えるでしょう。
 といったような訳で私はスタンダードの演奏も大好きです。本当はジャズのアルバムのレビューも超有名盤(サキソフォン コロッサスやクール ストラッティンetc.)有名レーベル(ブルーノート リバーサイドetc.)に対してはとても難しいものです。それらを評する人々の試金石になるわけですから。
 私が有名盤の紹介をしないのはそういうわけだったりしてね。

2005年09月05日 象をなでながら考えるJAZZ トラックバック:0 コメント:4

先ほどはコメントありがとうございました。
まずSonnyさんのブログを拝見させてもらってからコメントを書くべきでした。

SonnyさんはJAZZに造形が深いようですが、僕はJAZZはなんというか「大人」な印象をもっていて、とっかかりが見付からなかったのですが、ブログを拝見させていただいてそうでもないのかもしれないな、と思いました。

シェフの作るきまぐれサラダではわからないけれど、オムレツなど定番のものがしっかりしていればいいお店。
という比喩はとてもわかりやすいと感じました。

まだまだ音楽については知識は浅いですが、今回幸いにもSonnyさんからアドバイスを頂いて、さらに音楽を楽しむことができそうです。

音楽は楽しむものだ、という当たり前のようでいて、でも見失ってしまいそうなことも教えてもらいました。

何かお礼をしたい、と思い、考えついたのがコメントを書かせていただくことでした。

どうもありがとうございました。

2005年09月08日 もっせー URL 編集

Sonny
もっせーさんご訪問ありがとうございます。もっせーさんのように音楽に対してまっすぐに向き合う姿勢をまぶしく思います。
 ジャズのおいしいところを体感できるようになるにはそれなりに時間が必要になるでしょうが、ジャズを聴き始めるのに年齢の若さはまったく問題になりません。ゆっくりと楽しんでいけばいいと思います。
 私はすべてに対してというのは無理ですが、せめてジャズについては正直に付き合っていこうと思っています。
 あらためてそう思わせてくれたもっせーさんに感謝します。
 こちらこそありがとう。

2005年09月08日 Sonny URL 編集

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2005年09月15日 編集

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2005年09月16日 編集












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