ジャズ喫茶に響くマリオンの絶唱と泣き出す女

Marion Brown ‎Recollections Ballads And Blues For Alto Saxophone
"‎Recollections Ballads And Blues For Alto Saxophone" (creative works)
Marion Brown


そして前回からの記事のつづき

神戸でのマリオン ブラウンの「リコレクションズ」を入手しそこなった顛末を
帰りに立ち寄ったジャズ酒場プレイ オフ店主の坂梨さんに話すと
「私も欲しいからついでに予約してくれない」と頼まれました。

そこですぐにJRに電話をいれ2枚分を予約しなおしました。


前回書きましたように予約はしたものの実際に入荷するかどうかは
全くもって不確実です。

スイスのマイナーレーベルのアルバムであることを考えると
手に入れられる確率は限りなく低いように思えました。


数か月後にレコード店JRより電話があり
「入荷しました」との連絡がありました。

半分諦めていたレコードですからなんともうれしく
あわてて週末に引き取りに行きました。

店主の話によるとついでに5枚注文したらしいのですが
入荷は2枚だけだったとのことでした。
 いやぁ ラッキー


プレイオフの坂梨さんも心待ちにしているはずだと思い
その足でお店に「リコレクションズ」を届けに行きました。

開店して間もない時間でしたのでお客さんはカウンターに
何度か見かけたことのある女性が一人。

会釈をしてカウンターに座り坂梨さんにレコードを渡しました。

待ちかねたレコードの入手に二人して喜びながら
早速レコードをかけてみようとターンテーブルへ。


大の大人が二人顔を見合わせて嬉しそうにしているので
先客の女性も「なになにー」と興味津々です。

A面をセットし流れ出した一曲目は"Don't Take Your Love From Me"

録音によってはフリー系のサックス奏者にしては少し細身に聞こえる
マリオン ブラウンの音色ですが
しっかりと温かみをもって幾分のエコーがかけられて流れ出しました。

「おっ、これはいける」という表情で目を見合わす坂梨さんと私。

嫋々とそして力強くメロディーをいつくしむように
しかし過剰にはならない絶妙のバランスで繰り出される
マリオン ブラウンのアルト。

叫びやいななきなんて全くなしの
メロディーから離れずに紡いでいかれるソロ。

二人して気持ちよさに浸っていると
突然に先ほどの女性客がポツリと
「なんだか寂しい」と

まぁそういう受け取り方もあるよなぁと思っていると
「このレコード、やだぁ」とつづけます。
  いやいや最高やんか

なんだか女性はその後もぐずぐず言っています。

難儀やなぁと思いつつ聴いていると
曲は二曲目の"Angel Eyes"へと

ここに至ってその女性客
「もうやめようよ、このレコード いやぁ」
と更にごねだす始末。

「いっぺんかけたレコードは片面終わるまで聴かないと」
と店主の坂梨さん。

三曲目の"'Round Midnight"が流れ出すころには
その女性ついにはカウンターに突っ伏して泣き出す騒ぎ。

とても続けてレコードを聴くような状況ではありません。
「いいよいいよ」と私は坂梨さんに目で合図を

ついにプレイ オフ史上前代未聞
レコードが再生途中でぶち切られることとなりました。
  放送事故やん

ジャズ家で難儀な女性客には幾度か出くわしましたが
これは初めての経験でした。



ちょっと出来過ぎた穿ちかなぁと思うのですが
「リコレクションズ」一曲目が"Don't Take Your Love From Me"
切々と相手に自分の想いをすがるように伝えた曲。

二曲目が"Angel Eyes"
意中の人が約束に現れずに儚く失恋する曲。

彼女が曲の内容を理解していたとは到底思えませんが
マリオン ブラウンのアルトが彼女の深い部分にある
大きな傷あとを抉ったのかもしれません。

おそるべし マリオン ブラウン
言霊の詰まったアルバム「リコレクションズ」





ながながと個人的な思い出を垂れ流して
申し訳ありませんでした。

因みにやはりというかこのアルバム
かなりの入手困難盤
中古レコード店では5桁で並ぶことも
そんなレコードについて書いてこれまた申し訳ないです。












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