バリー ハリス翁に感謝

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 一と月が経過しいささか旧聞になってしまいましたが、5月の高槻ジャズストリートでのメインイベント”バリー ハリス ソロピアノ”はとても素晴らしい公演でした。
 MCに呼び出されステージに登場した彼は、白いあごひげを蓄えた小柄な老妖精といった風情でした。足取りからはさすがに老いが感じられます。そのままピアノにむかい演奏が始まりました。
 1曲目は彼の自作曲であり、最近は自身のテーマのようになっているナシメントでした。いつもならば観客にコーラスを指導したりしてコミュニケーションをとったりするのですが、今回はなし。それでもお客さんの中には良くご存知の方がいらしたようで、手拍子で合いの手を入れる方もいました。
 私にとっては次の’パリジャン ソロフェア”、”ライク サムワン イン ラブ”といった一連のメドレーですでに演奏は頂点にあるように感じられました。
 ピアノの音色はやさしくそして美しくとても温かみのあるもので、白熱灯のやわらかな電灯のような感触でした。演奏はまったく無駄な音がなく、よく考え抜かれてはいるがとても自然なものでした。
 この自然ということがこの演奏会でのキーワードであるように思います。何の気負いやてらいもなくそこにただあるかのようにつむがれていくジャズ。長い時間をかけていねいにみがきぬかれ、一点のの曇りもないバリー翁だけがもちえたひとつのジャズ。
 その音楽には媚や誇示といったものが微塵も感じられなず、75歳の彼がそのままのなげだされているという思いがします。
 もはや観客など存在しなくても、彼は同じように演奏を行うのではないでしょうか。2度と同じ演奏が行えない、それこそがジャズ。そんなことは重々承知していても、「バリー ハリスは同じ曲をリクエストすれば寸分たがわずに弾いてしまうのではないか。」そんな馬鹿な考えまでが、頭の中をよぎります。
 こんなに無防備な裸のジャズを聴くのは私自身初めての経験でした。じわりじわりと暖かい感動に包まれるのがわかり、幸せな気持ちで一杯になりました。
 しかしこんな演奏をしてしまっては、もうかれは長くは生きてはいけないのではないかと縁起でもないことを思ってしまいました。
 得がたい経験をさせていただきました。実行委員会の方本当にご苦労様です。
 そして、バリー ハリス翁、本当にすばらしい演奏をありがとう。あなたが、真摯にジャズを追求してこられたことを尊敬し、心より感謝します。

2005年07月04日 実演鑑賞 トラックバック:0 コメント:0












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