嬉しいことにロリンズは絶好調でした



  11月2日のロリンズコンサートを大阪厚生年金会館で聴いて参りました。ロリンズのコンサートへは可能な限り行くようにしているので今回で十数回目になると思います。彼のコンサートは出来のいい時と悪い時の差が大きい事を経験として知っていますので、期待と不安が入り混じった複雑な心境でこのコンサートに臨みました。毎回同じ様な気持ちになるのですが、今回はこれが最後のコンサートだと思えばその気持ちも一層強くなる気がします。
 ジャズのアドリブというのは全て即興でその場で作られると思っていらっしゃる方も多いと思います。しかし、実際にはそれまでの演奏の中から会得したフレーズを演奏するといったことも良くあります。極端な話しライブの場でレコードとほぼ変わらないと思うようなソロをとる演奏家も存在します。
 ロリンズの場合、そのアドリブは今まさにそこで生まれ出たフレーズを紡いでいくと言う本来の意味での即興演奏を行う数少ない演奏家です。そういう意味ではチャーリー パーカーと肩を並べる演奏家というのはジャズ界の中でもロリンズしかいないのではないかと思います。
 こういった演奏方法をとるがゆえに、ロリンズのライブ演奏は好調不調の差が激しくなるのはやむ終えないことだといえます。ロリンズという人はお客さんに楽しんでもらおうという気持ちの大変強い人です。演奏の調子が悪いときには、セントトーマスやモリタートといったヒット曲のオンパレードを繰り広げ、少しでもお客さんに楽しんで貰おうと演奏態度をシフトします。
 このことから人にロリンズの演奏の調子を見分ける方法として、コンサートの途中でセントトーマスが演奏されれば調子が悪く、アンコールで演奏されれば調子がいいと思ってくださいと言っています。
 
 今回のコンサートメンバーはベースに盟友のボブ クランショウ、ドラムスにスティーブ ジョーダン、トロンボーンにクリフトン アンダーソン、ギターには久しぶりにボビー ブルーム、パーカッションにキマチ ディニズルという編成でした。
 演奏が開始されて2曲ほどはまずまずの出来、75点といった印象を受けました。断っておきますがあくまでもロリンズの演奏としてはということで平均的なジャズの演奏であれば後20点はあげてもいいような出来です。愛するロリンズの真価を知るだけにその点数は辛めになってしまいます。
 だんだんと演奏を進めるうちに調子が上がったようで、ナイチンゲール サング イン バークリースクエアを演奏する頃にはアドリブに神懸り的なものを感じるようになりました。演奏の後、曲についてのMCをはさむことが多いロリンズですが、この曲の終了後はその場で「ありがとうございます」と言った後次の曲に思いをはせるような表情でじっとしていました。ジャズミュージシャンが演奏中に時折見せるといわれる「祈り」の瞬間が訪れたのかもしれません。私には「祈り」というよりは、つかみかけたミューズの着衣を離さないでおこうとするかのように見えました。
 時をおかずにその後演奏された曲はまったく文句のつけようがないほど素晴しいものでした。あふれ出るという言葉がまさにぴったりとしたいつ果てるともなく圧倒的なソロ。自由自在、天才のわざとしかいいようなない奔放な演奏。私の稚拙な文章力ではどうにも現せない凄まじく、そして暖かい演奏が惜しげもなく繰り出されます。
 ここにいたり、ずっとこの演奏を聴いていたい、終わってしまわないでくれと願っている自分に気付きました。私は凄みと幸せに体が打ち震えるのを感じていました。私のロリンズ体験の中で三本の指に入る素晴しい演奏でした。
 ひとつ言っておきたいのはこれらの感動は決して75歳の演奏家としての評価ではありません。年をとり枯れたという思いはロリンズの演奏からは微塵も感じません。サキソホン コロッサスが彼の最高の演奏なんて言葉がまったくの誤りであるというのはこのコンサートをお聴きになった方は理解していただけたと思います。75年の歳月を経て尚高いきわみへと登り続けるロリンズの姿がそこにはあります。
 いつもは二部構成をとるコンサートですが、休憩を挟まず一気に二時間ばかりの演奏を終えました。今回の大阪のロリンズコンサートに行かれた皆様はとても幸せな方たちです。名ばかりではない真の天才の演奏が繰り広げられたその場に参加したのですから。

 もちろんセント トーマスは最後の演奏曲でした。

2005年11月04日 実演鑑賞 トラックバック:2 コメント:10

うう……借金してでも大阪に行けばよかった!
東京公演はチケットを買ってあるのですが、期待するというより嫉妬を感じてしまいます(^^ゞ
私にとってロリンズのライブは今回が最初で最後です。期待と不安が交錯しています。
最近作でも聴いて気持ちを落ち着かせます!

2005年11月04日 rollins1581 URL 編集

Sonny 
 あの調子からすると東京公演でもかなり期待できると思います。私もロリンズが好調であることを願っています。rollins1581さんは生ロリンズ初体験との事ですが、絶好調のロリンズの演奏に恵まれればジャズの聴こえ方がまったく変わってしまう可能性があると思います。ロリンズ自身が言うようにレコーディングされたジャズというのは生のジャズとはまったく異なるものです。今現在を生きるロリンズ、ジャズそのものを体現するロリンズの演奏を楽しんできてください。ジャズを理解するには古いレコードばかり聴くのではなく今現在のジャズに触れることが不可欠だと思います。
 9.11コンサートの出来はロリンズの絶好調時から比べると75点の出来です。是非是非生のロリンズで衝撃を受けてきてください。
 東京での様子を知らせていただけたら嬉しく思います。

2005年11月05日 Sonny URL 編集

僕は大阪に住んでるのに行かなかったので今、大後悔してます。
今まで5回ほど行ってますが仕事でいけるかどうか分からなかったのでやめてしまいました。
どこかのレビューでも大阪の演奏はすばらしかったと書いてあるのを見かけました。羨ましいです。

上のRollins1581さんも東京公演楽しんだみたいですね^^

2005年11月09日 Monk URL 編集

Sonny
  Monkさん、ご訪問ありがとうございます。
大阪公演は休日のことが多かったのですが今回は平日でしたので、仕事の都合で行けない方も多かったようですね。
 今回のコンサートの後半は本当に素晴しかったです。休憩を挟まずに演奏を行ったのがその好調さを物語っていると思います。ロリンズは何故か"See you again later"と確かにアナウンスしていましたので、ひょっとするとまたの機会があるかもしれません。また来日して欲しいですね。私もちょっと期待しています。
 Monkさん、これからもよろしくお願いいたします。

2005年11月10日 Sonny URL 編集

はじめまして。chocolaと申します。
訪問履歴からたどって来ました。
私は今年に入ってから、ジャズに興味を持ち始めました。超初心者なので、色々勉強しなければと思って、まずは名盤といわれるものからひたすら聴いたりしています。(まだ全然CDの数少ないです。)ジャズについて、まだ全然詳しくないので、同じロリンズのコンサートに行っても、sonnyさんのような詳しいレポートはまだ書けないので、読ませていただいて、「おぉ!」って感じでした。やはり詳しい方は違いますね。(^^ゞ また、遊びに来たいと思います。

2005年11月10日 chocola URL 編集

Sonny
chcolaさん、コメントありがとうございます。
確かにジャズは広くまた深い世界ですが、聞き始めたばかりでも楽しめるものだと思っています。ジャズを楽しむのに初心者もベテランもありません。急がずにゆっくりジャズを楽しんでいれば、いつかは深い感動を得られるようになるはずです。
 なによりも、ロリンズの生のステージを聴いたのは、これからのジャズを楽しんでいくのにいい経験になったと思います。よかったですね。
 これからもよろしくお願いします。 

2005年11月11日 Sonny URL 編集

はじめまして!訪問履歴からたどってきました。私も札幌公演でいったのですが詳しい方が聴くとちがいますね。私の文章は感じたそのまんまの感想だけではずかしいかぎりです。まだまだ知識も浅はかですがジャズが好きな人が増えてくれればと思ってるのですが・・・。ところでリンクさせてもらってよろしいでしょうか?

2005年11月11日 ちゃく URL 編集

Sonny
ちゃくさん、ご訪問ありがとうございます。
札幌公演もなかなか良かったようですね。私も多くの方がジャズを聴いてくださるようにと願っているひとりです。ただ、初心者はまずこれを聞かねばいけないといった教条主義的なことは苦手です。ジャズは気に入ったところから聴いていくのが一番いいと思っています。そのほうがより深くジャズを楽しめるようになる近道だと考えています。
 リンクに関してはまったく問題ありません。どうぞよろしくお願いいたします。
 

2005年11月11日 Sonny URL 編集

これからきかなくちゃあだめというものではなく、私もそうだったのですが、私のような若い世代の者がジャズを聴きたいと思っても、なかなか、なにから入っていいかよくわからないというのが正直な感想です。てきとうに選んだCDで外れたためジャズを誤解してしまうということがあったので、そんなコーナーを始めたんですよ。けっこうさぼってますが、なかなか好評でジャズにはまっちゃいましたというメールをたまにいただいております。ま、それでいいかなと軽く考えておりますが・・・。ジャズ愛好家からすれば許されまじですかね?

2005年11月13日 ちゃく URL 編集

誤解させてしまった様で申し訳有りません。ちゃくさんのHPの推薦盤に不満が有る訳ではありません。いつも繰り返される「初心者への推薦盤」に対して疑問を感じているのです。
 それらの権威主義的、画一的(偏向的)、懐メロ主義、商業的といった部分に対してです。
 これについての責は大部分のジャズジャーナリズムといくらかの団塊世代の自称ジャズ愛好家にあると思っています。
 ジャズは今も尚死んでなどいないし現在にもいいジャズがたくさんあります(何よりこの間のロリンズのコンサートをみればわかるとおりです)。日本でよく紹介されるジャズは全体の1~2割にすぎません。ジャズの世界はもっと広くて自由なものです。そしてとても楽しく面白いものです。
 尚私のジャズを聴き始める人へのアドバイスは JAZZ1000回問われた私への質問(7/27) の記事を参照ください。
 

2005年11月14日 Sonny URL 編集












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