歌はナットですがピアノはガーランドゆずり



 
"I want a smile for christmas" Freddy Cole (Keystone)

 あるアメリカの有名コラムニストがライブハウスでヴォーカルを聴き、そのヴォーカリストがあまりにナット キング コールにそっくりだったので彼に「あなたは本当にナット キング コールにそっくりですね」と話しかけました。するとその彼はまたかというような顔をして「ありがとう」といったそうです。そのヴォーカリストこそナットの弟のフレディでした。
 彼は常に偉大な兄に比べられながら演奏生活を送っていたのでしょう。彼のスタイルがピアノの弾き語りであったので、それはある程度無理からぬことだったでしょう。しかしそのことが個性が重要視されるジャズ界にあって、彼を少なからず傷つけることになったのも確かなようです。
 彼のことを傷つけたであろうことに気付いたそのコラムニストはフレディにロングインタビューを行い、彼の演奏について全米に紹介することにしました。決してフレディは無名であったのではありませんが、そのことによって彼の名前が一般の人々の間に広く知られるようになりました。
 偉大な兄を持つというのはその兄弟達にとっては大変な事だと思います。ジャズ界にはハンク、サド、エルビンという三人共にそれぞれの一家をなした素晴しいジョーンズ兄弟がいますが、こんな例はなかなかあるものではないと思います。
 ちなみにフレディにはもう一人アイクという兄弟がいます。日本ではあまり知名度は無いと思いますが、彼もまた素晴しいヴォーカリストです。昔チャールズ ブロンソンが出演していたマンダムのCMで、バックに流れていた音楽を覚えていらっしゃるでしょうか。そのBGMで唄っていたのがアイク コールです。ナットとはまた違った男くさい歌唱が耳に残っていることだと思います。若い方にはちょっと難しかったかもしれませんね。
 70年代まではアメリカ本国でもそれほどの知名度は無かったフレディですが、今や日本でも多くのファンを持つようになりました。とても有名になったナタリー コールのおじさんということでご記憶の方もいらっしゃることでしょう。
 "I'm Not My Brother I'm Me"というタイトルの歌まで唄っていることからもわかるとおり、どうしてもナットのそっくりさんで注目をされがちですがフレディの歌には彼にしかない特徴があります。ナットの場合その美声で歌を歌い上げるという所に特色があるように思います。フレディもとてもいい声をしているのですが、歌を噛みしめるように語り聴かせる所に良さがあります。しみじみとしたその歌唱はとても滋味深いものがあり心にしみいる感じがします。
 表題のアルバムは日本制作によるクリスマスソング集ですが、彼のそのような素晴しい個性が生きたとてもいい作品に仕上がっています。この時期お薦めできるゆっくり楽しめるアルバムです。
 さて、どうしても歌に注目が集まるフレディですがピアノの腕前も大したものです。ピアノに関しては兄のナットにはあまり似ていません。そのピアノから一聴してわかるのはレッド ガーランドの強い影響です。歌を取ってしまえばたいがいの人はそのピアノをガーランドだと間違うのではないかと思うほどです。このクリスマスアルバムでは彼の他にラリー ウィリスがピアノとしていますので、彼のピアニストとしての魅力を存分に味わうには他のアルバムを聴いていただいたほうがいいかと思います。
 彼のピアノがなぜガーランドに良く似ているのかなとずっと思っていたのですが、あるとき彼のインタビュー記事を読んでその理由がわかりました。フレディは永らくの間ガーランドととても親しい関係にあったということです。そしてフレディはガーランドをピア二ストとしてとても尊敬していて、いつも彼のようにピアノが弾けたらと努力していたそうです。
 ガーランドのいない今、フレディの素敵なピアノに注目してトリオのアルバムを制作してくれるレコード会社は無いものでしょうかね。きっと素晴しい作品になると思うんですけど。

 今年もまたクリスマスイヴには彼のアルバムでゆっくりとした気分に浸りたいと思います。皆さんもいいクリスマスをお迎えになりますように。


 
 

2005年12月21日 埋もれたCD紹介 トラックバック:0 コメント:2

こんにちわ。
数年前にフレディ・コールのボーカル・アルバムを始めて買いました。
キング・コールよりも身近な感じの歌声に聞こえました。上手いと言うよりも暖かさが表に出てくるタイプのボーカルじゃないかと思いました。ふわぁ~とした暖かで落ち着いた膨らみのイメージです。

2005年12月21日 falso URL 編集

 falsoさん、ご訪問ありがとうございます。
そうですね、フレディの歌はナットとはまた違った暖かさがありますね。彼は基本的に物語するバラッズシンガーなのだと思います。じんわりとした暖かさが伝わってくるところが素晴しいです。ピアノにもまた注目いただけると嬉しく思います。

2005年12月22日 Sonny URL 編集












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