ハンプトンはずっとハンプトン



"Something special" Hampton Hawes (contemporary)

 ある一人のミュージシャンについてどの時期が最良であるか、もしくは好ましく思えるかということで会話が交わされることがあります。
 ジャズメンの中にも一貫してスタイルが変わらないという人もいます。たとえばジョニー グリフィンやデクスター ゴードンなどがそういった人達だと言えます。
 スタイルが変わる間もなくその一生を終えてしまうミュージシャンもいます。クリフォード ブラウンやレム ウィンチェスターなどがそうです。その他にも話題になるとすぐにジャズシーンから消え去ってしまってその後はどうなったのかわからないという人達もいます。
 これらの人々はそのスタイルの変遷ということが問題になることは無いのですが、長いミュージシャンとしての活動の中で幾度かの大きなスタイルの変化をみせる人達がいます。こういった人達について冒頭に上げたようなことがまま話題に上るわけです。
 「復帰後のペッパーはいけない。」とか「アセンション以降のコルトレーンは聴けない」やら「電化マイルス以降は聴くに値しない」などと世間の人達のなんとうるさいことかと思います。確かに自分の好みでジャズを聴くことは問題が無いのですが、自分の好みを人に押し付けるのは私にはあまり感心な事とは思えないのです。
 一流のミュージシャンがある日を境にして急に聴く価値を無くしてしまうことがあるのでしょうか。私には到底そんな事があるとは思えません。ジャズはまさに生き物でそれを紡ぎだすミュージシャンもまたひとところに留まり満足してしまうはずは無いのです。才能溢れるミュージシャンであればあるほどどんどん変化してしまうのは当たり前の事だと言えます。
 その変化にとまどいそれを価値の無いことだと考えるのは聴き手の力の無さをさらけ出してしまっただけのように思います。

 ハンプトン ホーズもまたそのキャリアの中でスタイルを大きく変えた人だといえるでしょう。彼の名はジャズピアノ入門といった本を開けば必ずその名を見つける事ができるはずです。50年代の後半に残されたコンテンポラリーでのトリオやギター入りの録音は演奏者はもとより聴き手にとってもまさに教科書の様な扱いがなされています。
 わかりやすく明解なアドリブ、テクニックにも溢れ小気味良くスゥイングするピアノ。この頃のホーズのピアノが嫌いだという人にはあまりお目にかかったことがありません。
 その一方、60年代後半以降のハンプトンについての評価はあまり芳しくないように思います。「アドリブのラインが長くなり難解」、「暗い」、「スイングしなくなった」などと否定的な意見が多く聴かれるように思います。
 
 ここに紹介しているアルバムは1976年のライブ録音です。彼の死のおよそ一年前の記録で最晩年の作品と言えます。永きに渡って共演をしてきたリロイ ヴィネガーのベースを伴ったトリオにデニー ダイアズのギター(スティーリー ダンでの演奏でご存知かも知れません)がいいアクセントになっています。
 ハンプトンのオリジナルが三曲と、「サニー」、「セント トーマス」、「フライ ミー トゥー ザ ムーン」と言ったおなじみの曲が演奏されています。ライブの演奏と言う事でエンターティンメントの要素もたっぷりで親しみやすい演奏になっていると思います。
 50年代の演奏に比べその音楽は内省的な色を深め表現力も大きく増しています。もとより持ち合わせていたブルージーさも深化しあわせて洗練さを獲得したともいえると思います。表面的には昔のような軽いスゥイングはなくなったように思えますが、それとは別に大きなうねりとダイナミクスを感じます。
 復帰後のハンプトン ホーズが輝きをなくしたなんていったのはどこの誰なんでしょう。
 最晩年に彼が勝ち得た境地をジャズを愛する人達に一人でも多く聴いていただけたら嬉しく思います。


2006年02月18日 埋もれたCD紹介 トラックバック:1 コメント:17

>自分の好みを押し付ける。

本当に多いと思いますし、自らも気をつけなければいけない事だと思っています。
『これを聴け』的発言は、チト辛いですね。
『こんなの聴いてます』的発言や『これは、個人的にはタイプじゃない』的発言が、逆に説得力が強まる事も有ると思います。

「人にはそれぞれ好みが有るから何とも言えないけど、私はハンプトン・ホーズとジョー・スタッホードが好きなの」と言ってた小さなレコード屋のおばちゃんを思い出しました。

1970年代のホーズですか。考えた事も有りませんでした。現在、心がピクッとしています(笑)。

2006年02月18日 falso URL 編集

 falsoさん、ご賛同ありがとうございます。
私は自信を持って言い切ることが出来ないもので「これを聴け」といえる人が羨ましくもあり懐疑的であったりします。
 晩年のハンプトン ホーズはある程度ジャズを聴いてこられたfalsoさんのような方に特にお薦めしたい作品です。是非聴いていただきたいなと思います。お聴きになったらまた感想を聞かせてていただければ嬉いです。 
 お話のおばちゃんのレコード店はなんだかほのぼのしていいですね。

2006年02月19日 Sonny URL 編集

falsoさんに賛同します。
結局、音楽の善し悪しじゃなくて、自分の耳にフィットするかどうかなんですよね。
「これを聴け~」と書いても嫌みのない優れたお薦めになっている場合も稀にありますが。
自分でブログ何ぞを書き始めてからは特に意識するようになりました。

恥ずかしながら、ホーズという人、初めて知りました。
ぜひ試してみたいと思います。
埋もれた盤の紹介、今後も楽しみにしています。

2006年02月19日 piouhgd URL 編集

piouhgdさん、コメントありがとうございます。
音楽の善し悪しというのはやはり有るのですが、肝心なことは好き嫌いと混同しないことだと思います。好き嫌いというのは不動ではなく変わっていくものです。5年後10年後にも同じ様にその作品に接することが出来るか考えてみるといいと思います。音楽を少し聴いてみただけでその価値の全てがわかると思わずゆっくりと楽しんでいくのがいいと思います。そのうちに善し悪しということがおぼろげに見えてくるのではないかなと思っています。
 ハンプトン ホーズについては聴いて損することは無いと思います。初めてということでしたら紹介したアルバム以外に、50年代のコンテンポラリーに残されたリーダー作を聴くのがいいと思います。ジャズの世界は非常に大きいのであわてず少しずつ楽しんでいくのがいいです。

2006年02月19日 Sonny URL 編集

>Sonnyさん
マジで聴きたくなりだしています。危険です(笑)。持ってないので買わないと聴けないと言う極めて危険な状態です(爆)。

>piouhgdさん
御賛同ありがとう御座います。私にSonnyさんのようなポリシーが有れば良いのですが、只単に「短気の呑気」なだけの人間なので、どっちが良いとか、こうなければならないだとか、論理的な部分で攻められると、結局負けたくないので、気が付くと「売れた方が勝ちさ。売れなきゃ次のアルバムだって作らせてもらえないんだぜっ!」って喧嘩を売っている性格です(笑)。決して売れているようなものを聴いている訳でもないのに・・・(爆)。

2006年02月20日 falso URL 編集

falsoさん
そそのかすようですが是非是非聴いてみて下さい。70年代のハンプトン ホーズをお聴きになったことがないということですから、falsoさんにはよりハードな”Live at the Jazz Showcase ”(enja)をお薦めしたほうがいいかなとも思います。よけいにあおっていますね(笑)。
 ちなみに私はそんなにたいそうなポリシーなどというものは持ち合わせていません。多分人の話を素直に信じないヘンコな性格で音楽を聴いているせいでこうなっただけのように思います。


 

2006年02月21日 Sonny URL 編集

こんにちわ。
早速HMVで、お勧めのアルバムを見てみたら・・・高い・・・普段なら2枚買える価格(笑)。
色々と聴きたいので自分に有る程度のルールを作っているのです。
それは・・・『1,680円以上のアルバムは良く考えよう』(笑)。価格は厳密な訳ではないのですが、2,500円を越える価格のものに手を出すのには随分勇気が居るのです。
現在頭の中で予算審議中です~(笑)。

2006年02月21日 falso URL 編集

falsoさんへ
確かに結構高い値段がついているようですね。では"At the piano"(contemporary)をお薦めしたいと思います。今ならばojcでamazonなどでそこそこの値段で買えるみたいです。メンバーがシェリー マン レイ ブラウンということでいささか保守的ですが、十分に70年代のホーズの魅力が味わえると思います。
 ojcの権利を持っていたファンタジーもついに独立レーベルではなくなってしまったので在庫限りの可能性も高いと思います。難儀なことになっていますね。 

2006年02月22日 sonny URL 編集

こんにちわ。色々とありがとう御座います。
わりあい手頃な値段でしたし歌物が幾つか入っていたので、こう言うタイプのものを彼がどう表現するのか興味も有りソレにしました。
少々時間がかかりそうですが楽しみに待っています。

吸収合併等で中々手に入らなくなるアルバムは残念ですね。特にCDは今までアナログで「幻」だったものが入手できるチャンスが出来た代わりに入手困難になるサイクルが早い気がします。
あのベツレヘムでも入手困難なアルバムが有ったりして勿体無いと思う事が有ります。

2006年02月22日 falso URL 編集

falsoさん
それはちょうどよかったですね。ハードさではお薦めしたenja盤には劣るのですが、このアルバムもしっとりした表情が素敵で良く愛聴しています。届くのをお楽しみに。

2006年02月23日 Sonny URL 編集

こんにちわ。
Hampton Hawes At The Pianoが、やっと手に入りました。
好きか嫌いか、歴史に残る名盤か忘れ去られる愚盤か、なんて事以前に刺激的な演奏です。
人の心に突き刺さる刺激と言う事だけで言えば、初期の作品以上かもしれません。好きになるのには、少々手ごわいかも(笑)。

2006年03月02日 falso URL 編集

falsoさん、こんにちは。
入手できてよかったですね。晩年のホーズは初めてとの事ですので最初はすこしとまどわれるかもしれません。何度か繰り返し聴くうちにしっくりくるようになると思います。根拠の無い話でもうしわけないですが、falsoさんには気に入ってもらえるようになる気がしています。ちょいと気長につきあってみてください。

2006年03月03日 Sonny URL 編集

こんにちわ。
楽しいアルバムを紹介していただき感謝しています。
一言で言って「面白い」です。
向こう側から擦り寄ってくるような演奏ではないので、逆に時間をかけて楽しむ事が出来そうです。
個人的には粗も灰汁も抜かずに居るところに好感がもてます。
でもやっぱりチト時間のかかる演奏かな(笑)。

2006年03月03日 falso URL 編集

私も便乗してAt The Pianoを聴いてみました。falsoさんのおっしゃるように刺激的な演奏ですね。I'm All Smilesという66年録音のアルバムも聴いてみたのですが、At The Pianoの方がより面白く聴けました。
Sonnyさんお薦めのSomething Specialとエンヤ盤、探してみます。

2006年03月10日 rollins1581 URL 編集

 rollins1581さん、お聴きいただきありがとう御座います。
 66年の録音も佳作だと思いますが、70年代の録音を聴いた後では過渡期であるような感じを受けると思います。
 enja盤は彼のキャリアの中でも大きなピークを記録した物として是非機会があれば聴いていただきたいなと思います。vol.1のほうを強くお薦めします。

2006年03月11日 Sonny URL 編集

こんばんは。
すっかり出遅れた感はありますが、このアルバム、聴いてみました。
これはまたいいアルバムですね。
とても気に入りました。
ぜひ、他の作品も聴いてみたいと思います。

2006年04月14日 piouhgd URL 編集

piouhgdさん、こんばんは。
出遅れた感なんて事はまったくありません。70年代のハンプトン ホーズを気に入っていただいて、とても嬉しいです。一人でも多くの人にこの時期の演奏を聴いていただけたらなと思います。
少し手に入れにくいようですが、enja盤は聴いていただけるといいなと思います。

2006年04月14日 Sonny URL 編集












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