落ちると深ーいジャズの落とし穴 だからジャズは嫌われる

ジャズというのは理解しようとすればするほど逃げてしまい、ジャズの深いところまで楽しむことが出来なくなることが多いと感じます。まるで山奥で道に迷ったときに、出口を探して動けば動くほど尚山奥に入っていってさらに迷ってしまうのに似ていると思います。
ジャズを聴こうとしたはずだったのがまったく違うことを趣味にしていることは良くあるようです。自分で自覚していればそれも立派な趣味だと思うのですが、ご本人はいっぱしのジャズ通のつもりだったりするんです。
ジャズトリビアな人
「マイルズのお父さんは裕福な歯医者さんだったんだよね。」「リー モーガンは昔日本人と結婚してたんだよね。」「あ、そういえばウェイン ショーターの奥さんも日本人で、みやこさんて名前だったんだ。」「このときマイルズは映画のラッシュを見ながら全部アドリブで吹ききったんだぜ。」
そんなことはまったくジャズの理解には関係ありません。都市伝説みたいにまったく根も葉もないことも多いですしね。講釈師見てきたようなうそを言い。
ジャズ歴史学者な人
「ダンス音楽としての演奏に飽き足らず、自分たちの演奏を楽しもうとした欲求を根源として発生したビッバップは……」
演奏を聴いたってそんなことはまったくわかりません。ジャズを聴くのにそんな歴史の理解はまったく不要です。
ジャズ理論家な人
「ミクソリディアン? いやだからさ、あれは純粋なモード一発じゃなくてさコードを進行させる代理手段としてだね便宜的に……」
ご飯を食べるのにお米の作り方を知る必要はありません。
レコードコレクターな人
「ついにね、見つけたのよデュクレデトムソン。いやぁ、まさかあんなところにさ、あるとはねぇ。それもまるっきりのミントでさ、たったの22万円……」
いやはやなんとも。
懐メロな人
「それがね、歌舞伎町のビルの地下にあった何とかって言う店でね大音量で至上の愛が鳴ってったわけ。まあ、みんな腕組みなんかしちゃってね。わかってるような顔を…… あの頃の日本が一番……」
やだやだ嫌ですねえ。
オレはもう40年ジャズ聴いてるぜな人
「ガーランドのグルービーも聴いたことのないやつにそんなことは言われたくないね。こんなのは定番中の定番だよ。まずそこを押さえてからクオータのことを言ってもらいたいね。大体このアルバムはジミーヒースの……」
あほ丸出しです。
ディスコグラファーな人
「ブルーノートの中には数多くのお蔵になったセッションがあるんだけれども、中でも有名なのはティナ ブルックスの4052番で、ジャケットとタイトルまで決まっていたのに、なぜかリリースされなかったんだよ。それが、一部のレコードの内袋の宣伝に記載されてたもんだからさ……」
当然ジャズを聴いてもそんなことはわかりません。
オーディオお宅な人
「ところがさあ、プリアンプを#7に変えた途端にさ、エバンズのピアノの後ろでコップをカチャカチャさせている音がとてもリアルに聞こえるようになっちゃてさ、それはそれは……」
まったくジャズとは関係ありませんね。
なんだか書いている間にどんどん気分が悪くなってきたのでこのへんでやめておきます。
お願いですから、ジャズをこれから聴こうという人の邪魔をしないで下さい。出来ればまっとうなジャズ愛好家になってください。
なんてね。
ジャズは本当に楽しいんですよ。本当ですってば。